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腰を寝違えてしまった!原因や対処法、予防法を徹底解説
朝、起き上がったときに、腰の痛みがひどくて困った経験はありませんか。実は腰も首などと同じように寝違えることがあります。今回は、腰を寝違えてしまう原因や対処法、予防法を解説します。
最終更新日: 2025.12.12
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腰の寝違えの原因

腰の寝違えの主な原因として、下記の4つがあげられます。
寝返りが少ない
寝返りが少ないと、血行が悪くなります。例えば、仰向けで寝ていて寝返りが打てなかった場合、下になっている背中の筋肉が長時間圧迫され、血行が滞ってしまいます。
寝返りの回数が減る理由として、急に激しい運動をしたり、仕事などの疲労で筋肉がこわばったりすることがあげられます。
寝返りが少ないと筋肉が動かず、凝り固まって痛み物質がたまってしまいを起こし、腰や背中に痛みが生じることがあるため、注意が必要です。
寝具の問題
腰の寝違えが起こる理由のひとつが、就寝時に反り腰状態となっていることです。柔らかすぎるマットレスを使用している場合、身体が沈み込んで、腰が反りすぎるおそれがあります。
反対に硬すぎるマットレスを使用しても、腰の寝違えは起こります。硬すぎて沈み込まないマットレスは寝具と腰のカーブの間に隙間ができ、筋肉が緊張しやすくなるためです。
マットレスのほか、枕の高さにも注意が必要です。枕が高すぎたり低すぎたりして自分の身体に合っていない場合、背骨の自然なカーブが崩れます。就寝中は不自然な体勢となり、腰に負担がかかります。
誤った寝具での就寝は、体圧が適度に分散されず、身体の中心である腰に負担が集中しがちです。
寝姿勢の問題
適切な寝具を選んでいても、本人の寝姿勢が原因で腰の寝違えが起こることがあります。たとえば寝返りが少ない方は、特定の筋肉に負担がかかりやすく、腰痛につながります。
腰痛の原因のひとつは、血流の滞りです。寝返りが少なく一部の筋肉にのみ負担をかけている状態は、血の流れを悪くして、腰を痛めやすくなります。
腰の寝違えは、必ずしも腰への負担が直接的に影響するとは限りません。腰は身体の中心に位置するため、ほかの部位に対する負担が腰痛を引き起こすこともあります。
横向きで寝ることが多い方の場合、寝返りが少ないと、身体の側面の左右どちらか一方に偏った負担がかかります。血流が滞って筋肉が凝り固まれば腰痛につながるため、腰周り以外への負担にも注意が必要です。
日常生活の影響
寝姿勢に限らず、同じ姿勢を続けると筋肉に負担をかけたり緊張を強めたりします。たとえばデスクワークで長時間座っていることが多い方は、常に腰の筋肉に負担をかけ続けている状態です。
デスクワーク以外の方も、運動不足やストレスによって腰痛を引き起こすことがあります。運動不足は筋肉が十分に使われないため、凝り固まってしまいます。心身へのストレスも筋肉を緊張させて腰痛の原因となる場合があるので、日頃から適度に解消することが大切です。
腰の寝違えが起きたときの対処法

では、実際に腰を寝違えてしまった場合は、どう対処すれば良いのでしょうか。
痛みがひどいときは2~3日安静にする
寝違えによる痛みが強い場合は、まずは安静を保つことが必要です。
ただし、完全に痛みが引くまでずっと安静にしている必要はありません。腰の寝違えが原因で起こるぎっくり腰では、長時間の安静がかえって痛みの改善を遅らせることがあると考えられています。
そのため、痛みを感じてから2~3日経過した段階で、無理のない範囲で少しずつ家事や仕事を再開することをおすすめします。
もしも、下肢のしびれや麻痺、激しい腰の痛み、発熱や嘔吐など、重い症状が現れた場合は、すぐに医療機関を受診してください。
炎症があるときは適度に冷やす
腰を寝違えたことで椎間関節に負担がかかっている場合、腰付近の関節で炎症が起きている可能性があります。急激に強い痛みが出た場合も、炎症のサインと考えられるため、適度なアイシングを施しましょう。
痛みが強い部分を中心に冷やすと、炎症が早く治まり、痛みの改善が期待できます。冷やすときは、1回あたり20分程度冷やし、1日4~5回行うのがおすすめです。
ただし、患部を冷やしすぎると凍傷になるおそれがあるため、注意しましょう。
頻発するときはコルセットを着用する
何度も腰を寝違えてしまう方は、腰の筋肉が突っ張って硬くなっている一方で、お腹周りの筋肉が緩んでしまっているかもしれません。頻繁に寝違えると、腰に大きな負担をかけ続けてしまうため、腰用のコルセットやサポーターの活用も検討すると良いでしょう。
コルセットやサポーターを適切に着用すれば、寝違えによって起こる痛みを緩和する効果が期待できます。
しかし、コルセットやサポーターは長く着用し過ぎると、かえって筋力を低下させてしまうリスクもあります。痛みがある程度落ち着いてきたら、関節の柔軟性や筋力アップを目指しつつ、コルセット類を外していくように心がけましょう。
整体院に相談する
自力での処置は、気付かずに誤った方法で行うリスクがあります。対処法を試しても痛みが長引く場合や、自力での処置に不安がある方は、整体院でプロに相談するのもおすすめです。
整体院では専門知識や豊富な経験を有する担当者が、それぞれの悩みや状態に合わせた施術を提案してくれます。なかでも理学療法士が在籍する整体院なら、より専門的な方法で痛みにアプローチできます。
腰の寝違えを緩和するためのストレッチ

腰を寝違えてしまったら、まずはつらい痛みを和らげたいですよね。
ここでは、腰の寝違えによる痛みを緩和するストレッチを紹介します。
大殿筋のストレッチ

腰の近くにあるお尻を伸ばすストレッチです。痛みが落ち着いてきたら、無理のない範囲でやってみてください。
- 椅子に腰かけ、片方の足を反対側の太ももに乗せる。
- 上になっている側の膝を抱え、反対側に引き寄せる。
- お尻と太ももの外側が伸びているのを感じ、10~20秒キープ。
- 元の姿勢に戻し、反対側も同様に行う。
腰が丸まらないように注意しましょう。
腰まわりのストレッチ

腰の筋肉を柔らかくするストレッチです。寝違えて硬くなった筋肉をほぐす目的で行います。
- 床に仰向けになり、両手を真っすぐ横に広げる。
- 両膝をくっつけた状態で、膝を曲げる。
- 両脚を横に倒し、10~20秒キープ。
- ゆっくりと元の姿勢に戻し、反対側も同様に行う。
足を倒すときは、肩が床から離れないようにすると効果的です。
肩甲骨のストレッチ

腰を大きく動かすストレッチです。大殿筋のストレッチと腰まわりのストレッチが問題なくできるようになってから挑戦してみてください。
- 床に四つん這いになる。
- 肩甲骨を寄せるイメージで、背中を反らす。
- 肩甲骨を離すイメージで、背中を丸める。
- 元の姿勢に戻し、同じ動きを繰り返す。
肘は曲げず、身体をしっかり支えた状態で行うのがコツです。
反り腰のストレッチ

反り腰の方におすすめのストレッチです。寝ている間に起きる腰の痛みを緩和したい方にも適しています。
- 床や布団に仰向けになる。
- 両膝をくっつけた状態で曲げ、両手で抱える。
- 両膝を胸に引き寄せる。
- 引き寄せた状態をキープしながら、ゆっくり呼吸を3~4回行う。
- 腰の周りがあたたかくなったと感じたら、両手を離して膝を曲げたまま足裏を床につける。
- 両足を真っすぐ伸ばし、ゆっくり呼吸を3~4回行う。
呼吸をするときは鼻から息を吸い、口から息を吐くようにしましょう。丁寧に呼吸をしながらストレッチすることで、腰まわりのだるさを緩和できます。
腰の寝違えをしないための予防策
腰を寝違えてしまったときの対処を知っておくと同時に、最初から腰の寝違えを起こさないように注意しておくことも重要です。
ここでは、腰の寝違えを予防するためのポイントを解説します。
腰を温める
寝違えは、腰まわりの血流が悪化することで起きる症状であるため、日頃から腰を温めて血流を良くすることが重要です。
お風呂に入る際はシャワーだけで済ませず、湯船につかるようにしましょう。また、ホットパックや湯たんぽを使って、腰を温めるのもおすすめです。
さらに、服装にも気を付けて、腰が冷えないように工夫すると良いでしょう。
寝姿勢を整える
腰に余計な負担をかけて寝違えを起こさないためにも、寝姿勢を見直してみましょう。
腰の寝違え予防におすすめの寝姿勢は、仰向けで膝を立てる姿勢です。膝の下にクッションや枕を挟むことで、膝を立てた状態を保ちやすくなります。この姿勢では骨盤が引っ張られにくいため、腰への負担を軽減できます。
また、横向きで丸まって寝る姿勢も、寝違え予防には有効です。足の間にクッションを挟むと、より理想的な寝姿勢になります。
自分にあった寝具を使う
寝返りの回数が減ることも寝違えの原因になるため、寝返りを打ちやすい寝具を選ぶことが大切です。
マットレスは、仰向けで寝たときに背骨が自然とS字状にカーブするものを選びましょう。寝返りがしやすく、腰が深く沈み込まない、または腰が浮かないマットレスが理想です。
硬さの目安としては、柔らかすぎず、硬すぎないものを選ぶことが重要です。自分の体格に合った適度な硬さのマットレスを選び、睡眠中に過度な負担がかからないようにしましょう。
掛け布団は、寝返りがしやすく、軽くて暖かいものを選ぶのがおすすめです。布団が重すぎると寝返りしにくくなり、腰に負担がかかりやすくなるため、注意しましょう。
運動を習慣化する
凝り固まった筋肉をほぐしたり血行を促したりするために、ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動を日常的に取り入れましょう。
運動する時間や場所がないときは、簡単なストレッチもおすすめです。先ほどご紹介したストレッチは特別な道具を用意する必要がなく、自宅でも手軽に実践できます。
ストレッチをするときは、逆効果にならないように無理のない範囲で行うことが大切です。過度なストレッチは、かえって腰を痛めるおそれがあります。
まとめ
腰の寝違えは、寝返りの少なさや不自然な寝姿勢などが原因で起こります。応急処置としては患部をアイシングしたり、コルセットを着けたりとさまざまな方法があります。
日ごろから、腰の寝違えを防ぐよう意識するのも重要です。寝具を見直したり、腰をしっかり温めたりすれば、ある程度寝違えのリスクを減らせます。健康的な生活を送るためにも、できることから始めてみてください。
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監修
M&メディカルリハ
株式会社
執行役員
髙見 友
(たかみ ゆう)
保有資格
- 理学療法士
- 日本理学療法士協会会員
- 医科学修士(埼玉医科大学)
- Certified Fascial Manipulation® Specialist (CFMS)
- ドイツ徒手医学認定セラピスト 2016年取得
- 認定理学療法士 運動器領域 2019年取得
経歴
- 2008年
- 千葉・柏リハビリテーション学院卒業
- 2008年
- いちはら病院勤務
- 2018年
- あかおぎ整形外科クリニック勤務
- 2019年
- M&メディカルリハ株式会社 執行役員就任