腕の付け根(外側)が痛い原因
腕の付け根の外側と内側、どちらが痛いのかで考えられる原因が異なります。まずは、腕の付け根の外側が痛いときの主な原因を紹介します。
四十肩・五十肩
腕の付け根の外側が痛い場合、四十肩・五十肩になっていることが考えられます。四十肩・五十肩は、肩の筋肉や腱、滑液包に炎症が生じてしまう疾患です。四十肩・五十肩を発症すると、下記のような症状が現れることがあります。
・肩まわりに強い痛みを感じる
・肩の可動域が制限される
肩の動きが制限されているため、腕を上げる、後ろに回すなどの動作をしたときに、特に強い痛みを感じやすいのが特徴です。
患部に炎症が起きている急性期(※2 )は安静にして、無理に肩を動かさないようにしましょう。整体やマッサージなどを受けるのも避けてください。
慢性期(※3 )になり強い痛みが落ち着いてきたら、少しずつストレッチやリハビリを始めましょう。症状が落ち着いてからも動かさないままだと、関節が固まり可動域が狭くなってしまいます。
※1 :内部に滑液を含んだ袋状の構造
※2 :急に症状が現れる時期
※3 :急激な症状が落ち着いたものの痛みなどが継続している時期
四十肩と五十肩の違いや原因、対処法などについて知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
肩腱板損傷
肩腱板(かたけんばん)損傷も、腕の付け根の外側に痛みが出る原因です。加齢による衰えや反復的な動作、肩への強い負荷などによって肩の腱板がダメージを受け発症します。下記のような症状が出ている場合、肩腱板損傷を起こしているかもしれません。
・腕を上げると鋭い痛みが走る
・肩を回す、重い物を持ち上げるなどの動作で痛みが強くなる
軽度の場合は安静・冷却・リハビリなどで症状の緩和を目指しますが、重度の場合は手術が検討されることもあります。
肩関節唇損傷
肩関節唇(かたかんせつしん)損傷によって、腕の付け根の外側に痛みが出ている可能性もあります。関節唇とは、関節まわりに付いている関節を安定させる役割を持つ組織です。
反復運動や事故による外傷などが原因で肩関節唇が傷付き、肩の動きが不安定になったり痛みが生じたりします。その他、下記のような症状が現れる場合もあります。
・肩を回したり腕を後ろに引いたりすると痛みを感じる
・肩を動かしたときに「カクッ」「コリッ」と異常音がする
また、肩関節の安定性が低下し、脱臼することもあります。初期段階でそれほど症状が悪化しなければ、安静・冷却・リハビリなどが有効です。しかし、状態によっては、悪化する前に手術が行われる場合もあります。
外傷性肩関節脱臼
腕の付け根の外側が痛くなる原因として、肩関節脱臼もあげられます。スポーツや交通事故などによって肩関節が強い衝撃を受けたり、不自然な方向に動いたりして骨が外れてしまうのです。
肩関節を脱臼すると非常に強い痛みを感じる他、下記のような症状が現れるケースもあります。
・肩まわりが腫れる
・肩関節が変形する
・肩関節の可動域が制限される
・肩がしびれたり血行障害が起きたりする
脱臼した場合、「整復術」によって外れた関節をもとに戻さなくてはなりません。整復を行う際に麻酔を使用するかどうかは、そのときの肩の状態によって異なります。
何度も肩関節脱臼を繰り返している、骨折しているなどの場合は、手術が必要になる場合もあります。また、肩関節の安定性を回復させるために、リハビリを受けることも大切です。
頚椎症性神経根症
頚椎症性神経根症も、腕の付け根の外側が痛くなる原因のひとつです。頚椎の椎間板に異常が生じる、頚椎の靭帯が厚くなるなどして神経が圧迫されて発症します。頚椎症性神経根症を発症すると肩や腕に痛みが出る他、下記のような症状が現れることもあります。
・首の動きが制限される
・首を後ろに反らせると痛みが悪化する
・腕がしびれる
・手指がしびれたり細かい動きができなくなったりする
異常が生じているのは首ですが、肩や腕の付け根などに痛みが広がることも多いため、肩や腕の問題だと思われることも少なくありません。
基本的には、首を動かさないように気を付けていれば特別な治療をしなくても自然に治っていきますが、状態によっては鎮痛剤が処方されます。また、日常生活に支障が出るほど痛みが強い場合は、手術が検討される場合もあります。
腕の付け根(内側)が痛い原因
腕の付け根の内側に痛みがある場合、内科的な原因が関与していることがよくあります。主な原因を2つ紹介します。
リンパの腫れ
腕の付け根の内側が痛い原因として多いのがリンパの腫れです。風邪などの感染症にかかったり、体調が良くなかったりすると免疫反応が起こり、リンパが腫れてしまいます。
脇の下は特にリンパが集中しているため、炎症によってリンパが腫れると痛みを感じることがあるのです。
リンパの腫れが引けば痛みも落ち着いてきますが、長期間腫れや痛みが続く場合は、医師の診断を受けましょう。治療法はリンパの腫れの原因によって変わりますが、感染症が原因の場合は抗生物質や解熱剤を服用するのが一般的です。
乳がん
腕の付け根の内側が痛い原因として、乳がんもあげられます。乳がんが脇下のリンパ節に転移するとリンパが腫れ、痛みを感じることがあるのです。引きつれによる違和感や不快感を覚える場合もあります。
乳がんも他のがんと同じく、早期発見・早期治療が肝心です。何も症状が出ていなくても、定期的に乳がん検診を受けるようにしましょう。
腕の付け根が痛いときの対処法
ここでは、腕の付け根が痛いときの対処法を紹介します。
まずは冷やす
腕の付け根の痛み以外に、患部が熱を持っている、押すと痛いなどの症状が出ている場合は、まず冷やすことから始めましょう。
これらの症状が現れている場合、腕の付け根周辺の筋肉に炎症が生じている可能性があります。しっかりと冷やせば血管が収縮して炎症が落ち着くため、痛みや腫れが軽減されます。
冷却時間の目安は1回15~20分です。連続して冷やし続けるのは避けて、数時間置きに行ってください。このとき氷や冷却材を、直に肌に触れさせないよう注意しましょう。
また、無理に腕を動かしたりスポーツをしたり、重い物を持ち上げたりするのを避けることも大切です。痛みが強い場合は、鎮痛剤を使うことも検討しましょう。
慢性期は温める
急性期をすぎた後、肩こりになったり腕を上げたときに痛みを感じたりと、症状が慢性化する場合があります。このようなときは、湯船につかったり温湿布を貼ったりして患部を温めてみましょう。
患部を温めると血管が拡張して血行が促進されるため、こり固まった筋肉がゆるんで症状が緩和する可能性があります。強い痛みを感じる場合は自己判断で温めるのは避け、医師に相談しましょう。
運動をする
腕の付け根の痛みが治まってきたら、運動をしてみましょう。腕や肩の硬くなった筋肉を伸ばすストレッチがおすすめです。身体を動かすと筋肉の柔軟性が高まるので、痛みの再発予防につながります。
ただし、無理やり動かすと痛みが再発するおそれがあるので、できる範囲で行うことが大切です。また、強い痛みを感じているときに運動するのは控えましょう。
痛みが引かないときは病院へ行く
いろいろ試しても痛みが落ち着かないときや、腕のしびれが出ているときは、医療機関を受診しましょう。
そのまま放置すると症状が悪化する可能性があるため、早めに医師に相談することが大切です。
まとめ
腕の付け根の外側が痛いときは外傷や神経痛、内側が痛いときは内科的な原因が考えられます。患部が熱をもっているときは冷やす、痛みが慢性化したときは温めるなど、状態に合った対処法を試してみましょう。
痛みが長引いているときや腕にしびれが出ているときは、そのまま放置すると症状が悪化する可能性があります。自己判断で対処せず、早めに医療機関を受診しましょう。