そもそも四十肩とは?
四十肩・五十肩とは正式な医学名称ではなく、「中年期に多い肩の痛みや違和感」をさす言葉です。40代で発症すれば「四十肩」、50代で発症すれば「五十肩」と呼ばれますが、医学的には同じ疾患を指します。
まずは、四十肩の症状や原因を詳しくみていきましょう。
四十肩の病名
四十肩の症状は、大きく肩関節周囲炎と癒着性肩関節包炎の2つにわけられます。
肩関節周囲炎
肩の関節を構成する関節包や筋肉、靱帯、滑液包などの組織に炎症が生じた状態です。炎症の部位に応じて、次のように分類されます。
・上腕二頭筋長頭腱炎
・腱板疎部炎(けんばんそぶえん)
・腱板炎
・肩峰下滑液包炎
・肩甲下滑液包炎
・烏口下滑液包炎
肩の痛みはそれほど強くなく、大半は問題なく肩や腕を動かせます。
癒着性肩関節包炎
周辺に生じた炎症の影響で骨の連結部分を包む肩関節包や滑液が入った肩峰下滑液包が癒着し、分厚くなった状態です。関節まわりが固まる拘縮が引き起こされ、肩や腕をなめらかに動かしにくくなります。
癒着性肩関節包炎になると肩を動かせる範囲が非常に狭くなるため、「凍結肩」と呼ばれることもあります。
なお、これらの疾患は医師が痛みのある部位や肩の動きを確認し、必要に応じたレントゲンやMRIなどの検査で診断します。
四十肩の症状
四十肩の主な症状は、肩の痛みと関節の違和感、動かしにくさです。片方の肩だけに症状が出るのが一般的ですが、まれに時間差で反対側にも痛みや違和感が生じることがあります。
痛みは腕を上にあげたときや背中に回したときなど、肩を動かしたときに出るのが特徴です。中には安静にしていてもズキズキとうずくように痛み、夜眠れなくなる方もいます。特に症状が出やすいのは腱板疎部で、痛む部位の大半は肩の前側です。
肩の可動域が制限されると、服を着る際や洗濯物を干す際に不便を感じることがあります。強い痛みがある期間は安静が求められますが、大事にしすぎると関節が固まりさらに動かしにくくなるため注意が必要です。
一般的に、四十肩は炎症期、凍結期、回復期の順番で進行します。最初は炎症による痛みで始まり、痛みが落ち着くとともに関節の拘縮が起こり、ゆっくりと元の状態に戻っていくのが通常の流れです。
しかし、中にはこの流れ通りに進まないケースもあります。痛みや関節の違和感などの症状が長引いたり再発したりする可能性もあるので、正しい対処を心がけてください。
四十肩の原因
四十肩の原因は、加齢による肩関節や筋肉の衰え、組織の縮小が主な要因と考えられています。そのほか、運動不足やストレス、加齢によるホルモンバランスの変化も影響を与えているとの指摘もあります。
四十肩になりやすい方の特徴
四十肩は、40代以降であれば誰でも発症します。特に発症リスクが高いのは、野球のように肩を酷使するスポーツ経験がある方や、怪我の既往歴がある方、姿勢が悪い方です。運動不足や強いストレスを抱えている方も、四十肩になりやすいとされています。
四十肩の症状をセルフチェック
症状の特徴を理解すれば、四十肩は自宅でセルフチェックできます。次の特徴にあてはまる場合は、四十肩の可能性があるため、医療機関での診断を検討しましょう。
・肩や首のまわりに違和感がある
・腕を動かすと肩に痛みが走る
・肩の関節付近を押すと痛い
・腕が頭より上にあがらない
・腕を背中に回せない
・朝起きたときに肩が痛む、肩の痛みで目が覚めた
・肩のうずくような痛みで眠れない
・片方の肩だけに痛みやこわばりがある
四十肩で病院を受診する目安
四十肩で受診するタイミングの目安は、肩の痛みが2週間以上続いているときです。肩を動かすと電気が走るような強い痛みがある、腕に力が入らない、日常生活に支障が出ている場合は、期間によらず早めに受診しましょう。
肩を動かしたときや寝返りを打ったときに痛みを感じた場合でも、放置せずに受診を検討しましょう。病院を受診すれば、消炎鎮痛剤や注射などでつらい痛みを和らげられます。肩を動かしたときに関節内部から「ゴリゴリ」と異音がして不安な場合も、医師に相談してください。
軽度な四十肩は時間とともに自然に改善しますが、無理に動かしたりマッサージしたりすると悪化するため、自己判断は避け、整形外科の受診を検討してください。
四十肩を予防するストレッチ7選
四十肩で痛いからといって長期間動かさずにいると、関節が固まり余計に動かしにくくなるため注意が必要です。強い痛みが落ち着いたら、ストレッチで肩まわりの柔軟性を高めましょう。筋肉も強化でき、四十肩の再発を防ぐのにも有効です。
ここからは、自宅で取り組める四十肩のストレッチを紹介します。
1.振り子体操
肩関節の可動域を広げるストレッチです。腰の高さぐらいの机や椅子の背を支えに、腕の重みで負荷をかけましょう。
1.痛みのないほうの手を机につき、軽く前屈みになる
2.痛む腕をだらんと下に伸ばし、前後に10~20回程揺らす
3.次に、左右に10~20回程度揺らす
4.次に、腕で円を描くように10~20回程度ぐるぐる動かす
2.四つん這いで行うアップダウン体操
肩につながる、肩甲骨を動かすストレッチです。四つん這いになったときに手首が痛い場合は、手をグーの形に握ると楽になります。
1.手のひらと膝をつき、四つん這いになる
2.肘を曲げないように注意しながら、肩甲骨をゆっくり頭のほうに動かす
3.次に、肩甲骨をゆっくりお尻のほうに動かす
4.2~3を5~10回程度繰り返す
3.座って行うアップダウン体操
四つん這いで肩甲骨を動かすのが難しい場合は、椅子に座ってストレッチしましょう。腕の重さで負荷がかかり、強度が高まります。
1.椅子に座って背筋を伸ばし、両腕は自然に下に伸ばす
2.背骨を動かさないように注意しながら、肩甲骨をゆっくり上にあげる
3.次に、ゆっくりと肩甲骨を下にさげる
4.2~3を5~10回程度繰り返す
4.拳を上げる体操
肩関節を動かし、可動域を広げるストレッチです。炎症による強い痛みが和らいでから取り組みましょう。
1.布団の上に仰向けで寝て力を抜く
2.お腹の上で、両手を組みあわせる
3.痛みのないほうの腕に力を入れて、両手をゆっくり頭の上に向けて持ちあげる
4.痛みを感じたら止まり、10秒キープしてゆっくりお腹に戻す
5.3~4を10回程度繰り返す。
5.テーブルスライド体操
仕事の休憩時に、手軽に取り組めるストレッチです。
1.机の前で椅子に座る
2.机の上に両手を伸ばし、肩の力を抜く
3.両腕を前に伸ばすように身体をゆっくり倒す
4.痛みを感じたら止まり、10秒キープしてゆっくり身体を戻す
5.3~4を10回程度繰り返す。
6.肩を上げる体操
腕を背中に回すのがつらいときにおすすめのストレッチです。無理をせず最初は小さな範囲から始めて、徐々に肩の可動域を広げましょう。
1.両足を軽く開き、背筋を伸ばしてまっすぐ立つ
2.両手を背中に回し、手のひらは外側に向ける
3.痛みのない手で反対側の手をつかみ、肘を曲げながらゆっくり上に持ちあげる
4.痛みを感じたらとまり、10秒キープしてからゆっくり手をさげる
5.3~4を10回程度繰り返す
7.タオルを使った体操
肩関節まわりの筋肉の柔軟性を高める肩甲骨のストレッチ法です。肩甲骨を意識しながら、腕を動かしましょう。
1.両足を軽く開き、背筋を伸ばしてまっすぐ立つ
2.胸の高さに両手でタオルの端を持ち、腕を肩幅よりやや広げる
3.タオルを引っ張りながら、ゆっくりと両腕を頭の上にあげる
4.タオルを背中側にまわす
5.ゆっくりと両腕をさげて、タオルが首の後ろにきたら止める
6.ゆっくりと両腕をあげて、逆の手順で元の位置に戻る
7.3~6を20回程度繰り返す
ストレッチは、痛みが出ない範囲で取り組むのが原則です。ストレッチ途中で痛みが出たら中止し、焦らずに徐々に可動域を広げましょう。病院にかかっている場合は、医師の指導にしたがって運動を始めてください。
ストレッチ中は呼吸を続け、反動をつけずにゆっくり筋肉を引き伸ばすのがポイントです。身体を温めた後に行うと効果が高まるので、毎日のお風呂上がりの習慣に取り入れましょう。
まとめ
四十肩の症状は、炎症による痛みから、次第に肩が動かしにくくなっていくのが一般的です。大半は自然に良くなりますが、無理して動かしたりマッサージしたりすると悪化するため、セルフチェックで早めの受診につなげましょう。自宅でできるストレッチにも取り組んで、繰り返す痛みを防いでください。