こむら返りの原因
こむら返りは、ふくらはぎ周辺の筋肉が必要以上に収縮して痙攣(けいれん)を起こすことが原因です。
ふくらはぎは別名「こむら」とも呼ばれ、ふくらはぎに起こることが多い痙攣なので、こむら返りといわれています。実際には、ふくらはぎだけでなく、足裏や指、太ももなどさまざまな部分に起こる症状です。
ふくらはぎの筋肉は、伸びすぎたり縮みすぎたりして無理に動かしてしまうと筋肉そのものが傷ついてしまいます。
そのため、筋肉の損傷を防ぐために、筋肉の中に存在する「筋紡錘(きんぼうすい)」と、腱と筋肉の境目に存在する「腱紡錘(けんぼうすい=ゴルジ腱器官)」という2つのセンサーが備わっていて、筋肉が過剰に伸び縮みしないようになっているのです。
筋紡錘は筋肉が伸びすぎると反応し、脊髄に情報を素早く送って「縮め」と指示を出します。一方の腱紡錘は、筋肉の伸び縮みの両方を監視しているセンサーで、異変を感じると脊髄に情報を送って対処しています。
これらの仕組みは「脊髄反射」と呼ばれる反応で、自分で意識して動かさなくても自然にバランスを取っているのです。
しかし、何らかの理由で脊髄反射がうまく働かないと、脊髄から適切な指示が出ずに筋肉がそのまま暴走してしまうことがあります。暴走すると筋肉のつったような感覚や痛みが起き、いわゆる「こむら返り」が起こるという仕組みです。
では、どのようなときにセンサーの誤作動が起こりやすいのでしょうか。
電解質異常
体内の電解質(ミネラル)バランスが崩れると、神経間での情報伝達がスムーズに働かず、筋肉の収縮がどんどん進んでしまうことがあります。
ミネラルのなかでも、カルシウムとカリウムは筋肉の収縮や神経間の伝達を円滑に進める働きがあり、2つのミネラルの働きを調整しているのがマグネシウムです。
マグネシウムが不足すると筋肉が興奮状態になりやすい特徴があり、腱紡錘の機能低下を及ぼすとされています。
大量の汗をかいたり、下痢、嘔吐などの消化器症状が起きたりして体内の電解質バランスが乱れると、筋肉が正常に収縮しなくなり、こむら返りが起こりやすくなるのです。
筋力不足
身体の筋肉は、年を重ねるごとに少しずつ衰えていきます。さらに運動不足が続く場合は、筋肉量が減少して柔軟性も低下しやすい状態です。
慢性的な筋力低下があると、ちょっとした刺激でも筋肉が収縮してしまい、こむら返りが起きやすくなるとされています。
特にふくらはぎは「第二の心臓」ともいわれる組織で、下半身に溜まりがちな血液を心臓まで送り込むポンプのような役割があります。ふくらはぎ周辺の筋力が低下すると、血行が滞って十分な酸素や栄養が筋肉に届かなくなり、よりこむら返りが起こりやすくなるので注意が必要です。
脱水・冷えによる血行不良
運動中や就寝中の発汗などが原因でおこる脱水や冷えなど、血行不良が起こりやすい状況下では、腱紡錘の機能が低下することがあります。
身体が水分不足になることで水分バランスが崩れ、ミネラルも不足しやすくなります。結果として、ミネラルバランスの乱れにつながり、腱紡錘が正常に機能しなくなって、こむら返りが起こりやすくなるのです。
また、身体が冷えると、ふくらはぎの筋肉が硬くなって収縮しやすくなります。これにより、こむら返りが起きやすくなります。
こむら返りが起こったときの対処法
こむら返りが起きた場合、まずは患部を無理のない範囲で伸ばしてみましょう。膝裏にある筋肉(腓腹筋やヒラメ筋)をゆっくり伸ばすことが大切です。
1.症状があるほうの足をまっすぐ前に伸ばして座る
2.片手で伸ばした足のつま先をつかみ、息を吐きながら足先をゆっくり手前に引く
3.ふくらはぎが伸びているのを感じながら、痛みが和らぐまでゆっくり伸ばす。痛みを感じた場合は、無理に引っ張らず、すぐに中止してください
もし伸ばしても痛みが引かない場合は、足首から膝裏にかけて優しくさするのも有効です。また、ホットタオルを乗せて温めたり、水分補給をしたりするのも良いでしょう。
こむら返りの予防にはストレッチが効果的
こむら返りが頻繁に起こらないように予防するには、ストレッチで筋肉をやわらかくしておくことが効果的です。ストレッチには筋肉の柔軟性を高め、血行を促進する効果もあります。
ストレッチは就寝前や起床後に取り入れるのがおすすめです。ここでは、こむら返りの予防にぴったりのストレッチを3つ紹介します。
ストレッチ1|アキレス腱伸ばし
椅子の背もたれや壁を使って行うストレッチです。
1.椅子の背もたれや壁に両手をつく
2.片方の足を後ろに伸ばした状態で、体重を前方向にゆっくりかけていく
3.反対側も同様に行う
後ろに伸ばしたほうの膝が曲がらないように注意しましょう。つま先は正面に向け、体重をかけるときは、かかとが浮かないようにすると効果的です。
ストレッチ2|ふくらはぎと太もものストレッチ
椅子や台を使って行うストレッチです。台の高さは30~50cm程度が適しています。
1.椅子や台に片足を乗せる
2.台に乗せたほうの足に体重をかけ、太ももとふくらはぎをゆっくり伸ばす
3.息を吐きながら7秒キープし、反対側も同様に行う
筋肉を伸ばすとき、かかとが浮かないように気を付けてください。左右それぞれ15回程度が目安です。
ストレッチ3|足首ストレッチ
ふくらはぎに近い関節である足首をほぐすストレッチです。柔軟性や可動域を向上させることで、筋肉のつりを予防できます。
1.椅子に腰かけるか、床に座る
2.足首を手で持ち、時計回りと反時計回りでゆっくり回す
回す方向を変えて大きく動かすのがポイントです。それぞれ10回ずつを目安として行ってみてください。
こむら返りに効果的なその他の予防法
こむら返りを予防するには、ストレッチ以外にもさまざまな方法があります。ここでは、こむら返りの予防に効果的な方法を解説します。
予防法1|寝る前にむくみ対策をする
夜間に足がよくつるという方は、寝る前にむくみ対策を取り入れてみてください。
おすすめの方法は下記の3つです。
・仰向けになった状態で、壁を使って足を上げて休む
・仰向けになった状態で、両足を持ち上げてぶらぶらと揺らす
・ふくらはぎを下から上へゆっくりさすり上げる
むくみ対策をするなら、血流が良くなって筋肉もやわらかくなっている入浴後がおすすめです。
こむら返りには、足の静脈血の流れが滞るとされる下肢動脈瘤が原因で起こるものもあります。このタイプの防止には、ほど良い着圧がある弾性ストッキングを着用するのも有効です。
予防法2|運動習慣をつける
加齢や運動不足などが原因で筋肉量が低下することで、こむら返りが誘発されることもあります。したがって筋肉量が落ちないように、運動を習慣化して筋力の維持を心がけることも効果的です。
いきなり激しい運動をする必要はありません。ウォーキングなど、無理なく始められるものから始めてみましょう。
予防法3|水分をこまめに摂取する
体内の水分が不足することでもこむら返りが起こります。自分でも気づかないうちに水分不足になってしまうケースもあるため、こまめに水分補給をしましょう。
水分補給のタイミングは、下記のような時間帯が目安です。
・起床時や就寝前
・食事のタイミング
・入浴の前後
食事と食事の合間で時間が空く、10時台や15時台にも水分を忘れずに摂ることが大切です。運動習慣がある方は、運動の前後に加え、運動中も必要に応じて水分補給します。
水分量は1日あたり体重1kgに対して30mlを目安に、喉の渇きを感じる前に積極的に摂取しましょう。また、カフェインやアルコールが含まれる飲み物は利尿作用があるため、控えるのがポイントです。
予防法4|食事でミネラルをバランス良く摂る
日々の食事からミネラルをバランス良く摂取することも、こむら返りの予防には重要といえます。特にマグネシウムとカルシウムのバランスが大切で、マグネシウムとカルシウムが1:2~3程度の割合になるように摂取するのが理想的です。
それぞれのミネラルを豊富に含む食品をあげているので、献立作りの参考にしてみてください。
●マグネシウムを含む食品
・ナッツ(落花生)
・玄米
・ゴマ
・わかめ
マグネシウムは未精製の穀物や種子類に多く含まれています。豆腐の製造に使われるにがりのなかには「塩化マグネシウム」を使ったものがあるので、豆腐を使うときはにがりの種類にも注目してみてください。
●カルシウムを含む食品
・牛乳
・チーズ(パルメザン)
・煮干し
・ししゃも
カルシウムは乳製品のほか、骨ごと食べられる小魚類に多く含まれています。カルシウムの吸収を促進するにはビタミンDも一緒に摂るのがおすすめです。小魚類はカルシウムとビタミンDを両方含んでいるので、両方の栄養素を無理なく摂取できます。
●カリウムを含む食品
・刻み昆布
・さつまいも(干し芋)
・切り干し大根
・干しあんず
・干しいちじく
カリウムは、海藻類や芋類、フルーツに多く含まれています。水に溶けやすい性質があるため、長時間水にさらしたり、茹でたりせずに食べるのが効果的です。煮汁ごと食べられるスープ仕立てにすれば、カリウムを摂りつつ水分補給にもなるので試してみてください。
まとめ
こむら返りは、筋肉の収縮に異常をきたして痙攣することで起こる症状です。体内のミネラルバランスが崩れたり、筋力低下や水分不足があったりすると起きやすいとされています。
こむら返りを予防するには、ストレッチで筋肉の柔軟性を高めたり、水分やミネラルを普段の食事で積極的に摂ったりすることが大切です。生活習慣を見直して、こむら返りを効果的に予防しましょう。
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