仕事が忙しかった、少し激しめの運動をしたなど、これといった理由が思い当たらないのに疲れを感じることはないでしょうか。もしかしたら、その疲れは「脳疲労」から来るものかもしれません。今回は、脳疲労の概要や発生する原因、脳疲労から回復する方法などについて解説します。
何もしていないのに疲れる…その原因は「脳疲労」かも?
何もしていないのに疲れる場合、脳疲労が原因として考えられます。とはいえ、そもそも脳疲労がどのようなものかわからない方も多いのではないでしょうか。そこで、脳疲労の概要や発生する原因などを紹介します。
どうして脳疲労は起こる?
脳疲労とは、その名の通り「脳が疲れている」ことです。脳は大きく3つの部位に分かれており、それぞれ異なる役割を担っています。
・大脳皮質:人間の五感や運動、言語などを司る部位
・大脳辺縁系:人間の感情や記憶、本能などを司る部位
・脳幹:呼吸や体温調節、ホルモンの分泌、食欲など人間の生命維持や本能を司る部位
通常であれば、上記の部位がバランスを保ちながらはたらき、情報を処理・共有しています。しかし、あまりに大量の情報が入ってくると上手く情報を処理・共有できなくなり、脳が疲れてしまうのです。
何もしていないのになぜ疲れる?
脳疲労は脳が大量の情報を処理しきれなくなって起こることは理解できたものの、「なぜボーっとしていただけなのに疲れるのか」と疑問に思う方もいるでしょう。ボーっとしているだけでも脳疲労が起こるのは、常に脳がはたらき続けているからです。
脳には安静状態のときに活性化する「デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)」という神経ネットワークがあります。DMNは思考を自分の内側に向けて情報を整理したり、緊急時にいつでも活動できるように待機したりする重要な役目を担っています。
悩みがあるなどで考え過ぎると、このDMNが過活動状態になります。DMNのエネルギー消費量は、脳全体のエネルギー消費量の60~80%を占めるともいわれています。そのため、DMNがはたらき過ぎるとエネルギーの消費量が増加して、脳が疲れてしまうのです。
脳疲労のサインとは?
脳疲労が起きているときには、下記のようなサインが現れる場合があります。
集中力が低下してミスが増える
DMNがはたらき過ぎて脳疲労が起こると、DMNの主要な構成部位である「前頭前野」の血流が低下するといわれています。前頭前野は、感情や記憶、思考、行動のコントロールなど、人間のさまざまな活動に関わる部分です。
前頭前野の血流が低下してはたらきが悪くなると、集中力や記憶力、思考力が低下するため単純作業でもミスが発生しやすくなります。
感情が不安定になる
前頭前野は人間の感情を司る部位でもあるので、前頭前野のはたらきが鈍ると感情のコントロールが上手くできなくなっていきます。
そのため、やたらと怒りっぽくなる、やる気が出なくなる、不安を感じるなど、マイナスな感情が出やすくなったら脳疲労が起きている可能性が高いと判断できます。
脳疲労を放置するリスク
脳疲労を放置すると、下記のような問題が発生するリスクがあります。
・自律神経失調症になる
・生活習慣病になる
なぜこのような影響が出るのかを把握しておきましょう。
自律神経失調症になる
脳疲労を放置すると、自律神経失調症になるリスクがあります。脳内のバランスが不安定な状態が長く続くと自律神経に大きな負荷がかかり、限界を超えてしまうためです。
自律神経は体温調節や内臓のはたらきなどに関わっているため、自律神経が乱れると内臓までストレスを受けて調子が悪くなってしまいます。
記憶力が落ちたりボーっとしている時間が増えたりといった症状が出たときは、脳疲労が起きて自律神経が乱れている可能性があるので早めに対処しましょう。
生活習慣病になる
脳に疲労が溜まると脳の情報処理・共有能力が低下するため、五感が鈍くなったり感情や行動のコントロールをとりにくくなったりしがちです。
味覚が鈍感になったり満腹感を得にくくなったりして過食しやすくなり、肥満につながる場合があります。肥満になると体重によって関節に負担がかかったり、生活習慣病を発症したりするリスクがあります。
脳疲労から回復するための方法
脳疲労を解消しないままでいると、自律神経失調症や生活習慣病を招くおそれがあります。病気を予防するためにも、脳疲労が起きている場合は早めに対処することが大切です。脳疲労から回復するための主な方法として、下記の3つがあげられます。
・十分に栄養素を摂取する
・質の良い睡眠をとる
・リラックスできる時間を増やす
上記の方法が脳疲労からの回復に有効な理由や、具体的な方法などについて解説します。
十分に栄養素を摂取する
脳疲労から回復するには、生活のリズムを整えることが重要です。栄養バランスが良い食事を毎日同じ時間にとるよう心がけましょう。
また、脳は糖をエネルギー源にしてはたらきますが、糖だけでは十分なエネルギーが得られません。タンパク質・ビタミン・ミネラルなどの栄養もしっかり摂取する必要があります。
特に、糖質をエネルギーに変える効果をもつ、ビタミンB1は積極的に摂取したいところです。ビタミンB1が不足すると糖をエネルギーに変えにくくなり、疲労感を覚えたり集中力が低下したり、イライラや不安などを感じやすくなったりします。
ビタミンB1を豊富に含む食材として、下記のようなものがあげられます。
・豚肉
・赤身肉
・カツオ
・うなぎ
・玄米
・ナッツ類
・大豆
・ほうれん草
・カリフラワー
など
上記の食材を日々の食事メニューに取り入れてみましょう。
質の良い睡眠をとる
質の良い睡眠をとることも、脳疲労からの回復に役立ちます。睡眠は記憶を整理したり脳に休息を与えたりするだけでなく、疲労の原因物質である活性酸素を除去する役割も担っているためです。下記のような習慣を身に付けると、睡眠の質が上がりやすくなります。
・日中にしっかりと日光を浴びて体内時計を調整する
・寝る前にスマートフォンやタブレットを使わない
・適度に運動する
・朝食をしっかりとる
・就寝前の食事を控える
・就寝前に心身をリラックスさせる
・夕方以降のカフェインの摂取を控える
・晩酌や寝酒を控える
・禁煙する
など
また、寝室の温度・湿度や寝具、パジャマなどにもこだわると、より睡眠の質が向上しやすくなります。寝室は暑くも寒くもない状態にする、湿度を40~60%程度に保つ、心地良く眠れる寝具や着心地の良いパジャマを用意するなどして眠りやすい環境を整えましょう。
リラックスできる時間を増やす
ストレス過多になると脳疲労が起こりやすくなります。部屋にアロマの香りを拡散する、お気に入りの音楽を聴くなどして、リラックスできる時間を増やしましょう。アロマオイルがない場合は、コーヒーやハーブティーの香りを楽しむのもおすすめです。
また、自然の多い場所に出向いて、木や草の自然な香りを感じつつ散歩するのも良いでしょう。適度な運動によって脳の血流が良くなったり、自律神経のバランスが整ったりといった効果が期待できます。
散歩の時間は1日30分が目安です。睡眠の質を上げたい場合は、朝の散歩で日光を浴びることをおすすめします。まとまった時間を確保するのが難しい場合は、10分ずつに分割しても構いません。
まとめ
脳は、活動時はもちろん安静にしているときでも常に働き続けており、疲労が蓄積しやすい状態にあります。
脳疲労が溜まると集中力が落ちたり感情がコントロールできなくなったり、自律神経失調症や生活習慣病を招いたりするおそれがあるため、早めに対処することが重要です。規則正しい生活を心がけ、質の良い睡眠をとって脳疲労からの回復に努めましょう。
また、ストレスは脳疲労を悪化させるので、リラックスできる時間を増やすことも重要です。良い香りを楽しむ、音楽を聴くなどすぐにできる対策も多いので、早速試してみましょう。