肉離れとは?
肉離れは、筋肉に大きな負荷が急にかかり、筋膜や筋繊維の一部が傷ついたり、断裂してしまったりした状態を指します。スポーツやトレーニングをしているときに起こりやすいけがの一種です。
強度が高く激しい運動やスポーツの最中に、身体を無理に動かしてしまったときに起こりやすいとされています。肉離れが起こると患部に激痛が起こり、走ったりするのはもちろん、筋肉を動かすこと自体が困難になることもあるので注意が必要です。
肉離れの重症度について
肉離れは、患部の筋肉がどの程度損傷したかによって重症度が変わります。重症度はⅠ型(軽傷)、Ⅱ型(中等症)、Ⅲ型(重傷)に分類され、それぞれ回復までかかる期間も違います。
Ⅰ型(軽傷)
最も軽傷とされるのが「出血型」とも呼ばれるⅠ型です。筋繊維に小さな傷ができ、筋肉内で出血がある状態を指します。
患部を押すと痛みますが、自力歩行はできる程度の肉離れです。適切に処置をしていれば、受傷後1~2週間程度でスポーツが問題なくできるまで回復します。
Ⅱ型(中等症)
Ⅱ型は「筋腱移行部損傷型」とも呼ばれており、肉離れのなかでは中程度に相当します。一部の筋肉組織に損傷や断裂がありますが、完全に断裂するまでには至りません。患部に腫れや内出血を伴うこともあります。
Ⅰ型よりも痛みが強くて自力歩行が難しく、回復までに1~3か月程度を要します。
Ⅲ型(重傷)
最も重症なのが「筋腱付着部損傷型」とも呼ばれるⅢ型です。患部の筋線維や筋膜が完全に断裂している状態で、患部が凹んでいるのが目で見てわかります。
激しい痛みがあり、自力歩行は困難です。手術が必要になるケースもあるため、回復するまでに3~6か月前後かかることも珍しくありません。
肉離れの後遺症の症状
肉離れが起きたときに適切な治療をせずに放置してしまうと、筋肉が損傷したままになってさまざまなトラブルや後遺症につながる可能性があります。
一度傷ついた筋肉をきちんとケアしておかないと、同じ部位で肉離れが起きやすくなるので注意が必要です。さらに、後遺症が出ているにもかかわらず放置していると、周辺の筋肉に余計な負担がかかって肉離れが再発するリスクが高まります。
肉離れを放置すると下記のような後遺症が残るだけでなく、今後の競技人生にも大きな影響を与えます。肉離れを起こしたら、適切な治療を行うことが重要です。
また、一度肉離れが回復したように見えても、今まで通り動かしているうちに損傷した部分や付近の筋肉が硬くなります。しこりのようになった部分は瘢痕(はんこん)組織と呼ばれ、つっぱったような違和感が残るケースもあります。
瘢痕組織があると競技復帰後に同じ部位で肉離れを起こし、パフォーマンスが下がることも多いので注意しましょう。
筋肉のこわばり、しこり
肉離れを起こした部分やその周りの筋肉がこわばったり、動かしにくくなったりすることがあります。傷ついた筋繊維などがケロイド状に変化して硬い瘢痕組織になり、しこりとして触れる状態になります。
可動域の制限
損傷した筋肉が硬くなることで、関節の動きが制限されて可動域が狭まり、スムーズに動かせなくなります。
スポーツやトレーニングはもちろん、状態によっては日常生活にも支障が出る後遺症です。
痛み
損傷した部位に痛みが残るケースも多く見られます。常に痛む慢性的な症状のほか、運動時など患部を動かしたときに痛みが強くなることもあります。
筋力低下
傷ついた筋肉が衰えてしまい、筋力が低下するのも後遺症のひとつです。
筋力低下はさまざまなトラブルの原因になり、将来的に肩こりや腰痛、体型の変化などにつながる可能性も否定できません。
違和感
適切に治療をせずに放置すると、患部の違和感が残りやすくなります。痛みが引いて回復したと思っても、筋肉に違和感やつっぱり感が残って不快に感じることもあります。
患部の筋肉が盛り上がり、見た目に違和感を覚えるケースも見られます。
筋膜炎
筋膜炎は、損傷した筋膜に炎症が起こって患部に痛みが出たり、可動域が狭くなって動かしにくくなったりする状態です。
炎症が治まるまでは痛みが持続するので、日常生活でも運動中でも不便だと感じることが増えてしまいます。
コンパートメント症候群
コンパートメント症候群とは、筋肉組織が傷つくことで筋肉の内圧が上昇し、血液の循環不全を起こした状態です。損傷したときに起こった内出血によって血管や神経が圧迫され、筋肉の壊死や神経障害が生じることもあります。
手術療法が適用されることもある後遺症で、回復までさらに時間がかかることも多く見られます。
肉離れの原因
肉離れの後遺症は日常生活にも影響を与えかねないものなので、そもそも肉離れを起こさないことが重要といえます。
ここでは、肉離れが起こる原因を解説します。肉離れを起こさないためにも、ポイントをしっかり押さえておきましょう。
準備運動不足
運動前の準備運動を十分に行っていないと、筋肉が硬いまま運動することになります。ちょっとした動きでも筋肉が急に引き伸ばされるようになり、肉離れを起こしやすくなるので注意が必要です。
運動やトレーニング前は入念に準備運動を行い、ケガ防止に努めましょう。
筋肉疲労
筋肉に疲労が溜まったまま運動を始めると、筋肉が凝り固まって硬くなってしまいます。硬さが残ったままの筋肉を無理に動かすと肉離れにつながるため、ウォーミングアップをしっかり行うのが大切です。
さらに、運動後にもストレッチなどを取り入れ、運動で火照った筋肉を十分にクールダウンさせておくことも忘れないようにしましょう。
柔軟性の低下
筋肉の柔軟性が低下していることも原因のひとつです。前述の準備体操の不足や疲労の蓄積なども、柔軟性低下の要因とされています。
柔軟性が低下したまま放置すると筋繊維が傷つきやすくなるので、運動前後にストレッチをして筋肉を柔らかいままキープできるように工夫することが重要です。
水分不足
水分が不足していると、筋肉が固くなって肉離れが起こりやすくなります。特に運動中は汗をかいて知らないうちに水分不足になりやすいため、こまめに水分補給を行いましょう。
また、飲酒後はアルコールの分解に水分が必要になるため、より肉離れを起こしやすい状態になるので注意が必要です。
肉離れの応急処置
受傷後の治療をスムーズにするためには、肉離れが起きたときの応急処置をしっかり行っておくことが大切です。肉離れの応急処置としては、下記の「PRICE処置」が広く知られています。
応急処置を適切に行った後は、医療機関で治療を受け、リハビリを行ってください。
・Protection(保護)
まずは、肉離れがさらに悪化しないように、患部が動かないように固定します。タオルや上着など、周りにあるものを巻いて保護し、ふいに動いたりぶつけたりしないようにしましょう。
・Rest(安静)
損傷した部分が悪化しないように、患部を安静に保ちます。
近年は安静にしすぎるよりも、適度に動かしたほうが回復が早いとの研究結果も出ています。しかし、肉離れの重症度や部位などは人それぞれであり、専門的な知識がないとどの程度動かして良いかはわかりません。
自己判断で動かさず、まずは安静にして専門家のアドバイスを受けるのが無難です。
・Icing(冷却)
氷水を袋に入れ、タオルなどで包んでから患部に当てて冷やします。
氷を直接患部に当てたり、保冷剤などを使ったりすると凍傷になるおそれがあるため、必ず氷水を使ってアイシングするのがポイントです。
・Compression(圧迫)
患部を包帯やテーピング、バンテージなどを使って圧迫し、腫脹が広がらないように処置します。アイシングと併用することで、血流を抑えて腫れや内出血が広範囲に広がるのを防ぐのが目的です。
ただし、あまりきつく巻きすぎるとかえって損傷部位を傷めることにつながるので注意しましょう。
・Elevation(挙上)
内出血が悪化するのを防ぐためにも、患部を心臓より高い位置に持ち上げておくことも必要です。血液が患部に溜まると腫れや内出血が長引きやすいため、重力を利用して血液が患部に集まりにくくします。
まとめ
肉離れは後遺症が残りやすいとされており、筋肉のつっぱり感や筋力低下などに加え、重篤な場合には壊死や神経障害を引き起こすこともあります。
もし肉離れを起こした場合は、直後に「PRICE処置」と呼ばれる応急処置をしっかり行うことが大切です。その後、医療機関で適切な治療を受け、リハビリをしましょう。