あぐらがかけない原因とは
あぐらがかけない理由は人によって異なりますが、大きく分けると「股関節の形状」「筋肉の硬さ」「関節の疾患」の3つが考えられます。生まれつき股関節の構造があぐらに向いていない場合もあれば、日常の姿勢や運動不足が原因で股関節まわりの筋肉が硬くなっていることもあるのです。
まずは、それぞれの原因について詳しく解説します。
原因1|生まれ持った股関節の形状によるもの
あぐらがかけない原因のひとつに、生まれもった股関節の形状が影響している場合があります。股関節は骨盤のくぼみに収まる形で形成されていますが、この向きには個人差があり、生まれつきの構造や成長過程によって決まるのです。
特に、股関節には「前捻角(ぜんねんかく)」と呼ばれる骨のねじれが存在します。この角度が大きいと、股関節が内向きに収まりやすく、逆に角度が小さいと外向きになります。あぐらをかく姿勢は、股関節を外側へ開く動作が必要になるため、前捻角が大きく内向きの股関節をもつ方ほど、外側にひねる動きが苦手になり、あぐらがかきにくくなるのです。
このように、股関節の構造は個人によって異なるため、柔軟性の問題だけではなく、骨の形状そのものが影響している可能性も考えられます。
原因2|腰や股関節周辺の筋肉の硬直によるもの
あぐらがかけない原因として、腰や股関節周辺の筋肉が硬くなっていることが考えられます。
特に、腰の筋肉(脊柱起立筋群・腸腰筋)、殿部の筋肉(大殿筋・中殿筋・小殿筋・梨状筋)、内ももの筋肉(内転筋群)が硬直すると、股関節の可動域が狭くなり、あぐらの姿勢をとることが難しくなるのです。
筋肉の硬直は、日常生活の姿勢や習慣によって引き起こされることが多く、下記のような要因が関係しています。
猫背での長時間のデスクワーク
長時間のデスクワークで猫背の姿勢が続くと、腰の筋肉(腸腰筋や大腰筋)が緊張し、股関節の柔軟性が低下します。特に腸腰筋が縮こまると、股関節を外側へ開く動作が制限されるため、あぐらをかく際に違和感を覚える方もいるでしょう。
運動不足
運動不足が続くと、股関節周辺の筋肉が使われずに硬くなりやすくなります。特に、大殿筋や中殿筋、小殿筋、梨状筋などは、あぐらの姿勢を維持するために重要ですが、これらの筋肉が衰えたり、硬直したりすると、股関節の動きが制限されてしまうのです。
内股の姿勢
普段から内股気味の姿勢をとるクセがあると、股関節が内側に向きやすくなり、外側へ開く動作が苦手になります。あぐらをかこうとしても膝がうまく開かず、窮屈さを感じることがあるでしょう。
筋肉の柔軟性を取り戻すことで、股関節の可動域を広げ、あぐらがかけるようになる可能性があるため、適切なストレッチを取り入れることが大切です。
原因3|股関節や膝の疾患によるもの
あぐらをかこうとすると股関節や膝に痛みを感じる場合、関節や周辺の組織に炎症や変形が起こっている可能性があります。
特に、股関節に痛みを感じる場合は、変形性股関節症、FAI(大腿骨臼蓋インピンジメント)、グローインペイン症候群、関節唇損傷、股関節滑液包炎などの疾患が関係していることが考えられるでしょう。
これらの疾患では、関節の可動域が制限され、特定の動作で痛みが生じることが多いため、無理にあぐらをかこうとすると症状が悪化する可能性もあるのです。
また、子どもがあぐらの姿勢をとる際に股関節の痛みを訴える場合は、単純性股関節炎、ペルテス病、大腿骨頭すべり症などの疾患が疑われます。特に、片側だけに痛みが生じる場合や、歩行に違和感がある場合は、注意が必要です。
さらに、あぐらをかく際に膝に痛みを感じる場合は、変形性膝関節症や鵞足炎、腸脛靭帯炎などが原因かもしれません。
股関節や膝の痛みが長期間続いたり、動作時に強い痛みが出たりする場合は、早めに整形外科を受診しましょう。
あぐらがかけるようになるストレッチ6選
股関節の形状や疾患が原因の場合、あぐらをかくのは難しいですが、筋肉の硬さが影響している場合は、ストレッチで改善が期待できます。股関節や内ももの柔軟性を高めることで、無理なくあぐらをかけるようになるでしょう。ここからは、あぐらをかきやすくするためのストレッチを6つ紹介します。ぜひ実践してみてください。
ストレッチ1|股関節のストレッチ
股関節まわりの筋肉をしっかり伸ばせば、可動域を広げる効果が期待できます。下記のストレッチを無理のない範囲で行いましょう。
1.床に座り、両膝を立てる
2.左膝を内側へ倒し、膝の角度を90度にする
3.かかとをお尻から遠ざけ、股関節に適度な伸びを感じる位置でキープする
4.両方のお尻に均等に体重を乗せるよう意識する
5.ゆっくりと元の姿勢に戻し、反対側も同様に行う
ストレッチを深めるためには、姿勢を意識しながら行うことが大切です。無理のない範囲で、リラックスしながら実践しましょう。
ストレッチ2|殿筋群のストレッチ
殿筋群(大殿筋・中殿筋・小殿筋)は股関節の動きに関わる重要な筋肉で、硬くなるとあぐらをかきにくくなります。臀部をしっかりと伸ばすことで、股関節の可動域が広がり、姿勢が安定しやすくなります。下記のストレッチを取り入れて、柔軟性を高めましょう。
1.両膝を立てて床に座る
2.左足の外くるぶしを右の太ももにのせる
3.背筋を伸ばし、上半身をできるだけ起こしながら胸を左脚に近づける
4.お尻の筋肉がしっかり伸びていることを感じながら、20~30秒キープする
5.伸びが強すぎて痛みを感じる場合は、右脚を前にずらし、上半身を少し後ろに倒して調整する
6.ゆっくりと元の姿勢に戻し、反対側も同様に行う
ストレッチ中は呼吸を止めず、リラックスしながら行いましょう。継続することで殿筋群の柔軟性が向上し、あぐらの姿勢がとりやすくなります。
ストレッチ3|股関節をゆらすストレッチ
股関節をゆるやかに動かしながらほぐすことで、可動域を広げ、あぐらの姿勢をとりやすくするストレッチです。特に、股関節まわりの筋肉が硬いと感じる方におすすめです。無理なくリラックスしながら行いましょう。
1.床に座り、左脚を真横へ伸ばし、右足のかかとを恥骨へ引き寄せる
2.骨盤を立て、背筋を真っ直ぐ伸ばした状態をキープする
3.左脚を股関節の付け根から左右にゆっくりと揺らす
4.20~30秒間繰り返し、股関節まわりの筋肉がほぐれるのを感じる
5.ゆっくりと元の姿勢に戻し、反対側の脚も同様に行う
股関節をリラックスさせながら、無理のない範囲で揺らすのがポイントです。継続して行うことで、股関節の可動域が広がり、あぐらの姿勢がとりやすくなります。
ストレッチ4|内転筋のストレッチ
内転筋(太ももの内側の筋肉)が硬くなると、股関節の可動域が制限され、あぐらの姿勢がとりにくくなります。このストレッチでは、内転筋をしっかりと伸ばし、柔軟性を高めることを目的としています。無理のない範囲で実践しましょう。
1.床に座り、両膝を曲げて足の裏を合わせる
2.かかとをできるだけ身体に引き寄せ、膝を外側に開く
3.背筋を伸ばしたまま、両肘を膝の内側に添える
4.ゆっくりと肘で膝を押しながら、太ももの内側を伸ばす
5.そのまま20~30秒キープし、ゆっくりと元の姿勢に戻す
膝を押す際は、無理のない範囲で力を加え、呼吸を止めずに行うのがポイントです。継続することで、股関節の柔軟性が向上し、あぐらの姿勢がとりやすくなります。
ストレッチ5|仰向け前屈
仰向けの状態で前屈を行うことで、股関節や内ももの柔軟性を高め、あぐらをかきやすくする効果が期待できます。
1.仰向けになり、両膝を立てる
2.内ももを閉じた状態で、かかとをお尻に近づける
3.息を吐きながら、両膝を外側に開く
4.背中の力を抜き、リラックスしながら脚の重みで股関節を開く
5.痛みや違和感がある場合は、両膝の下にヨガブロックやクッションなどを挟み、無理のない範囲でキープする
6.そのままの姿勢で20~30秒キープし、ゆっくりと元の姿勢に戻す
ストレッチ中は深い呼吸を意識し、無理に力を入れずリラックスすることが大切です。
ストレッチ6|コアラのポーズ
コアラのポーズは、股関節を深く開きながら内ももをしっかり伸ばすストレッチです。あぐらをかく際に重要な柔軟性を高めるのに役立ちます。股関節が硬い方でも無理なく行えるので、リラックスしながら実践しましょう。
1.仰向けになり、両膝を立てて内ももを閉じる
2.息を吸いながら、右膝を胸に寄せる
3.息を吐きながら右膝を外に開き、右足の外くるぶしを左のももの上に置く
4.左脚を浮かせ、左膝を胸に寄せる
5.余裕があれば、左ももの裏に両手を添えてさらに胸に近づける
6.無理のない範囲で右膝を外に開きながら、深く呼吸を繰り返す
7.そのまま20~30秒キープし、ゆっくりと元の姿勢に戻す
8.反対側も同様に行う
ストレッチ中は、股関節の伸びを感じながら無理のない範囲でキープしましょう。
まとめ
あぐらがかけない原因は、股関節の形状や筋肉の硬さ、関節の疾患などさまざまです。特に筋肉の硬直が原因の場合は、ストレッチを取り入れて柔軟性を高め、あぐらの姿勢をとりやすくすることができます。今回紹介したストレッチを無理のない範囲で継続し、少しずつ股関節の可動域を広げていきましょう。
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