側弯症の人がやってはいけないことは?放置するリスクや日頃からできる対策

成長期の子どもや自分自身に側弯症の疑いがあるとき、何をしてはいけないのか、どう対処すべきかと悩む方も多いのではないでしょうか。無意識のうちにやってはいけないことを続けてしまうと、症状の悪化を招くおそれがあるため、注意が必要です。 今回は、側弯症の悪化を防ぐために避けたい行動や、日常的にできる対策を紹介します。


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側弯症の人がやってはいけないこと

「側弯症の方が特定の動作をしてはいけない」とする明確な科学的根拠は示されていませんが、背骨に負担がかかる姿勢や無理な運動を避けることが大切です。

側弯症の方は健康な方に比べて、背骨の歪みや痛みが出やすい傾向があるため、注意しましょう。

ここでは、側弯症の方がやってはいけないことを紹介します。

注意すべき日常生活の姿勢

側弯症の方は、日常生活の何気ない姿勢によって背骨への負担が増し、腰痛や歪みを引き起こしやすくなる可能性があります。

以下の例は、背骨のバランスを崩す原因になりかねません。

・横向きに寝た状態でテレビを見る
・うつ伏せで本を読む
・机やテーブルに頬杖をつく
・猫背になる
・横座りをする
・長時間同じ体勢を続ける
・片側に重心をかけて立つ

このような姿勢を続けていると、身体の左右差が大きくなり、側弯症の進行を助長するおそれがあります。無意識に行っている行動を振り返り、側弯症が悪化しないよう気を付けましょう。

重い荷物を持つ

重い荷物を持ち上げたり、長時間持ち歩いたりする動作は、側弯症の方にとっては特に注意が必要です。荷物の重さで背骨や筋肉に負荷がかかると、痛みが出やすくなったり、すでにある歪みの悪化を招いてしまったりするおそれがあります。

特に、腰や胸にヘルニアがある場合は、少しの負荷でも側弯症の症状が強く出ることがあるため、配慮が必要です。荷物の中身を調整し、身体に負担がかからないよう心がけましょう。

自己流での筋トレやストレッチ

側弯症の改善や予防を目的に運動を取り入れることは良いことですが、誤ったやり方はかえって悪影響を及ぼしかねません。自己流の筋トレやストレッチを行うと、無意識に一部の筋肉ばかりを使ってしまい、側弯症が悪化する可能性があります。

また、痛みを感じているにもかかわらずストレッチを続けたり、反動をつけて無理に筋肉を伸ばしたりすると、変形した背骨に負荷がかかりやすくなります。ストレッチや運動を始める場合は、専門家の指導を受け、自分の身体に合った方法を選ぶことが大切です。

避けるべきスポーツ

スポーツは健康維持に役立つ反面、側弯症の方にとっては注意が必要です。特に、テニスやゴルフ、野球など、ひねる動作が加わるものは、脊椎の弯曲をさらに悪化させるおそれがあります。

また、腰や背中に強い負担がかかる激しいスポーツは、特定の方向に負担がかかることで左右差が生じやすくなるため、慎重な判断が求められます。これらのスポーツは、背骨への過剰なストレスを伴うので、避けたほうが無難です。

側弯症を放置するのは危ない?考えられるリスク

側弯症をそのままにしていると、背骨の歪みが進行し、日常生活にさまざまな不調が現れる可能性があります。側弯症を放置すると、次のようなリスクが考えられるため、注意しましょう。

肩こり・腰痛につながる

側弯症を放置すると、曲がった背骨を支えるために周囲の筋肉へ過剰な負担がかかり、慢性的な肩こりが起こりやすくなります。特に、身体の左右で筋肉の使い方に偏りが出ると、緊張が続いた状態となり、痛みが慢性化しやすくなります。

さらに、痛む部分をかばうように不自然な姿勢をとることで、腰への負荷が増し、腰痛や膝痛へとつながるケースも少なくありません。これらの不調は日常の動作に支障をきたすだけでなく、側弯症の進行につながる可能性もあるため注意が必要です。

消化機能が低下するおそれがある

側弯症が進行すると、背骨の弯曲が見た目だけにとどまらず、内臓機能に影響を与えることがあります。肺や心臓の周りにある胸郭が変形し、本来あるべき位置を保てなくなることで、胃や腸などの消化器官が圧迫され、正常な動きが妨げられてしまいます。

このように内臓が圧迫されると、運動機能の低下や便秘などの症状もみられる可能性があるのです。症状が進行してからでは回復に時間がかかるため、放置しないことが大切です。

側弯症の主な治療法

側弯症の治療は症状の進行具合によって異なり、軽度の場合は経過観察で様子をみることが多く、進行している場合は装具や手術が検討されます。

ここでは、側弯症の主な治療法について紹介します。

経過観察

背骨の弯曲具合が比較的軽い場合(背骨の弯曲の角度が30度未満)、まず経過観察が選択されることが一般的です。整形外科では、一定の間隔で定期的に診察とレントゲン撮影を行い、背骨の状態に変化がないかを確認します。

経過観察の結果、弯曲の進行がみられないと判断された場合は、矯正装具などの積極的な治療を行わないこともあるのです。

とはいえ、症状の進行具合や変化に応じて、都度治療方針を見直すこともあり、医師の判断のもとで適切な対応がとられます。

装具による治療

背骨の弯曲が30度を超え、なおかつ50度には達していないケースでは、中等度の側弯症に分類され、症状の進行を抑える目的で装具による治療が行われることがあります。

この段階では「アンダーアーム装具」と呼ばれる体幹装具を使用し、背骨の弯曲に対して矯正を図ります。ただし、この治療はあくまでも悪化を防ぐことを目的とした方法であり、側弯症を完全に治すものではありません。

装着には日常生活への配慮も必要なため、医師の指導のもとで正しく使用することが重要です。骨の成長が落ち着き、脊柱の弯曲が進行していないと判断された場合は、装具の使用時間を段階的に減らし、治療を終了します。

手術

背骨の曲がり角度が50度を超えると、手術が検討されるケースがあります。特に胸椎で45~50度以上、腰椎で40度以上の側弯は、進行性のリスクが高く、将来的な身体への影響を避けるために外科的介入が望ましいとされています。

主な手術方法としては「後方矯正固定術」や「前方矯正固定術」などがあります。それぞれの詳細は以下の通りです。

・後方矯正固定術:脊椎に金属のロッドなどを取り付けて背骨の位置を安定させる
・前方矯正固定術:身体の側面から切開し、変形した背骨を固定する

手術の可否や方法は年齢や症状に応じて慎重に判断されます。入院は約2〜3週間を目安とし、その後はリハビリを行った上で退院となるのが一般的な流れです。

側弯症の悪化を防ぐためにできること

側弯症の進行を防ぐためには、普段から姿勢を意識しましょう。正しい姿勢を保つことが、背骨への過剰な負荷を軽減するポイントになります。

理想的な姿勢は、壁に背をつけたときに、かかと・お尻・肩・ふくらはぎ・後頭部がすべて接している状態です。この姿勢を日常でも心がけることで、身体の偏りを防ぎやすくなります。

また、長時間のデスクワークやスマートフォンの操作も脊柱に負担をかけるため、こまめな休憩を取り入れましょう。例えば、1時間に1回は立ち上がって身体を伸ばしたり、軽いストレッチを取り入れたりするのもおすすめです。日々の姿勢や習慣を見直すことで、症状の進行を防ぐよう心がけましょう。

まとめ

側弯症は放置するとさまざまな不調を引き起こす可能性があるため、早期の対策が大切です。背骨に負担がかかる姿勢を続けていたり、重い荷物を持ったり、自己流の運動を行ったりすることで悪化するおそれがあります。

気になる症状がある場合は自己判断せず、まずは専門医に相談しましょう。また、お子さまが学校健診で指摘された場合も、早めに医療機関への受診を検討することをおすすめします。

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