肩甲骨のストレッチは肩こり対策に効果的!
肩こりを改善するには、肩そのものではなく、肩甲骨まわりの筋肉へのアプローチが大切です。肩こりの原因となる筋肉は、首よりも肩甲骨にかかわる部分が多くを占めています。
肩甲骨は、背中側の肋骨の上に位置し、どこの骨とも直接連結していない浮いた構造をしています。健康な状態では、肋骨の上を滑るように柔軟に動くのが特徴です。
しかし、長時間のデスクワークやスマートフォンの操作によって、前傾姿勢を続けていると、肩甲骨は外側に開いたまま固定されてしまいます。
この状態が続くと、周囲の筋肉の血流が悪くなり、硬くこり固まってしまいます。さらに肩甲骨の動きが悪化するという、悪循環に陥ってしまうのです。
特に、肩こりと深く関係するのは「僧帽筋」「肩甲挙筋」「菱形筋」の3つです。僧帽筋は首から背中上部まで広がる大きな筋肉で、肩甲骨全体を覆っています。
肩甲挙筋は、肩甲骨を引き上げる筋肉、菱形筋は肩甲骨を内側に寄せる役割があります。これらの筋肉は身体の深い位置にあるため、マッサージではほぐしにくいのが現実です。
そこで効果的なのが、肩甲骨を意識して動かすストレッチです。ストレッチによって血行を促し、筋肉の柔軟性を高めることで、肩甲骨本来の動きを取り戻すことができます。結果的に、慢性的な肩こりや首のこりがやわらぎ、身体全体のバランスも整いやすくなるでしょう。
肩甲骨の状態をセルフチェック!
肩こりや不調の原因が肩甲骨にあるかどうかを確かめるには、まず自分の肩甲骨の動きや柔軟性を知ることが大切です。ここでは、自宅で簡単にできるセルフチェックの方法を4つ紹介します。日常の姿勢や動きと照らし合わせて確認してみましょう。
肩の上がり方で確認する
肩甲骨の柔軟性は、腕を上げる角度をチェックすれば、ある程度判断できます。まず、壁に背中をつけて立ち、ひじを伸ばしたまま腕を前から肩の高さまで上げましょう。手のひらは下向きにします。
そのまま壁に沿って腕をゆっくり上げ、痛みを感じない範囲で無理なく上がるところまで上げてください。このとき、肩の水平ラインを起点に、腕がどの角度まで上がるかがチェックのポイントです。
0~45度しか上がらない場合 | 肩甲骨の動きがかなり悪く、筋肉も硬くなっている状態。 |
45~60度 | やや硬さがあり、可動域がやや狭くなっている状態。 |
60~90度までスムーズに上がる | 肩甲骨がしっかりと動いている状態。 |
肩の高さまでは肩関節だけで動かせますが、それ以上に腕を上げるには、肩甲骨の連動が不可欠です。
肩甲骨を触れるか確認する
肩甲骨の柔軟性は、背中に回した手でどこまで触れられるかでも確認できます。片方の手を背中側へ回し、同じほうの肩甲骨に触れてみましょう。指先で肩甲骨の先端に触れられれば、合格ラインです。
柔軟性が高まると、先端だけでなく肩甲骨の上のほうまでしっかりつかめるようになります。いきなり深く触ろうとせず、背中に手を回したときに肩甲骨が浮き出ている感覚を意識してみてください。
日々ストレッチを続けることで、少しずつ動きやすさが実感できるようになります。
背中で手を合わせて確認する
肩甲骨の可動域を確認する簡単な方法として、両手を背中に回して合わせるチェックがあります。手のひら同士を背中側で合わせ、指先を上に向けた状態にしましょう。
このとき、手のひら同士がすき間なくしっかりと密着できるかがポイントです。無理なくぴったり合わせられる場合は、肩甲骨の柔軟性が良好な状態です。上手く合わせられない場合は、肩甲骨や肩関節まわりの筋肉が硬くなっている可能性があります。
手を合わせる動作の中で、左右の肩甲骨を背中の中央へ引き寄せるイメージを持つと、動きを意識しやすくなるでしょう。
交差させた手を触って確認する
肩甲骨の柔軟性を調べるには、左右の手を背中で交差させて届く距離を確認する方法も有効です。片方の手を上から、もう一方の手を下から背中に回し、指先同士が触れ合うかどうかをチェックしてみましょう。
指先が届くだけでも十分ですが、さらに柔軟性が高まると指を組んだり、手首をつかんだりすることもできるようになります。
このチェックは、左右の動きに差が出やすいため、左右両方のパターンで行って、違いを比べてみるのがおすすめです。
動かしにくいほうがあれば、そちらを重点的にストレッチすることで、バランスの良い可動域を目指せます。
おすすめの肩甲骨ストレッチ10選
肩甲骨まわりの筋肉をほぐし、コリや血行不良を改善するには、日常的なストレッチが効果的です。ここでは、自宅や職場でも簡単に取り組めるおすすめの肩甲骨ストレッチを10種類、紹介します。
1.腕を上げ下げするストレッチ
肩甲骨の可動域を広げるには、肩甲骨を肋骨から「はがす」イメージで動かすのがポイントです。特に肩甲挙筋や菱形筋を意識すると、背中から肩にかけての緊張をやわらげられます。
1.両ひじを曲げて、肩よりも少し高い位置まで上げます。無理なく上がる範囲で構いません。手は軽く握り、鎖骨付近に添えます。
2.息を吐きながら、5秒ほどかけて両ひじを後ろへ引きます。ひじの高さを保ちながら、肩甲骨を内側へ強く寄せていきましょう。
3.肩甲骨を寄せた状態を意識しつつ、ひじを下げて脱力します。
この動きを、5回繰り返します。朝起きたときや就寝前、またはデスクワークの合間に取り入れるのがおすすめです。動きはゆっくり行いましょう。
2.肩を回すストレッチ
肩関節は広い可動域を持つ球関節に分類されますが、日常生活ではあまり大きく動かすことがありません。肩まわしによって肩関節を大きく動かし、肩甲骨の動きをスムーズにしましょう。
1.椅子に座り、両手をそれぞれ肩の上に置きます。
2.そのまま、ひじで大きな円を描くように肩をゆっくり回します。
3.一方向に10回回したら、反対方向にも同じように回します。
4.左右それぞれ2~3セット繰り返します。
3.背伸びをするストレッチ
背伸びの動作を取り入れたストレッチは、肩甲骨の「上に引き上げる」「下げる」「内側に寄せる」という3つの動きを効果的に引き出します。
1.椅子に座り、両手を上へ大きく伸ばします。身体全体でしっかりと背伸びをするように意識しましょう。
2.ひじを曲げながら、肩甲骨を背中の中央に寄せるイメージで、ゆっくりと腕を下ろします。
3.この動作を10回、2~3セット繰り返します。
4.肩甲骨を寄せるストレッチ
このストレッチでは、脇を締めた状態をキープするのが効果を高めるコツです。脇が開いてしまうと肩甲骨がしっかり寄らず、動きの質が下がってしまうので注意しましょう。
1.椅子に座り、両ひじを曲げて手のひらを上に向けながら前に出します。
2.脇を締めたまま、両手を外側へ開いていきます。ひじを支点に、手のひらを外へ回すイメージです。
3.この動きを10回、2~3セット繰り返します。
5.寝ながら肩甲骨を寄せるストレッチ
仰向けや横向きで行うストレッチは、身体をリラックスさせながら筋肉をほぐせるのが特徴です。
1.横向きに寝た状態で、上の脚を前に出し、下の脚と交差させるように置きます。
2.上にある手を大きく後方へ引き、反対の手は前方に伸ばします。身体をねじるような姿勢になります。
3.この姿勢を10〜15秒キープします。
4.反対側も同じように行い、左右それぞれ2~3セットずつ繰り返しましょう。
6.身体を前に倒すストレッチ
両手を背中側で組みながら前屈することで、肩甲骨の内転動作が促され、猫背や肩こりの緩和が期待できます。腕の重みを活かして、無理なくじっくりと伸ばしましょう。
1.肩幅よりやや広めに立ち、両腕を背中側へ回して指を組み、ひじを伸ばします。
2.腕を身体と直角になるくらいの高さまで引き上げ、そのまま上半身を前に倒します。
3.腕の重さを使って、さらに前傾姿勢を深めていきましょう。腕が自然に振れるように少しずつ動かすと、肩甲骨まわりがしっかり伸びていきます。
4.頭の位置もやや下げることで、背中全体のストレッチ効果が高まります。
反動はつけず、ゆっくりと動作するのがポイントです。肩まわりがじんわりとほぐれてくるのを感じながら、リラックスして行いましょう。
7.腕を振り下ろすストレッチ
肩甲骨と腕を連動させることで、背中全体をダイナミックに動かすストレッチです。
1.腕を前にまっすぐ伸ばし、身体の正面で両手の指を組みます。
2.腕を斜め上方向に引き上げ、背中の奥へ肩甲骨をぐっと引き込むような意識を持ちます。
3.そこから胸の位置までゆっくりと腕を下ろします。力を使って振り下ろすのではなく、肩甲骨を動かした結果として腕が自然に下がってくる感覚で行うのがポイントです。
4.この動作をリズミカルに繰り返し、肩甲骨がしっかりと動いているかを意識しましょう。
肩甲骨が背中でしっかり浮き上がるように感じられれば、柔軟性が十分に保たれている証拠です。
8.壁を使ったストレッチ
壁に腕を固定するので、肩まわりの筋肉を集中的に伸ばすことができ、肩甲骨の可動域を無理なく広げられます。
1.壁の角や平面に向かってまっすぐ立ち、片手を壁につけます。ひじは90度に曲げて肩の高さに合わせ、指先からひじまでが壁にぴったりと沿うようにセットしましょう。
2.そのままの姿勢で、上半身をゆっくりと前に倒します。足の位置は動かさず、身体だけを前傾させるように意識してください。このとき、壁側の肩甲骨がじわっと伸びていくのを感じられるはずです。
9.壁に体重をかけるストレッチ
肩甲骨を立体的に動かしたいときに効果的なのが、壁を使って体重を肩にかけながら身体をひねるストレッチです。
1.壁に向かって立ち、足は肩幅よりやや広めに開きます。腕を前に伸ばして壁に手をつき、指先は内側を向けるように横向きに配置します。
2.左足を一歩前に出しながら、左肩に体重をかけて身体をひねります。肩甲骨が引き寄せられる感覚を意識しましょう。身体は自然と横向きになり、重心は左肩に乗せます。
3.次に足を入れ替えて右足を踏み出し、右肩にも同じように体重をのせてひねります。このとき顔は押し出している肩とは反対側を向くことで、骨盤の回旋がスムーズになります。
10.椅子に座って行うストレッチ
椅子に座ったまま背中を丸めていき、肩甲骨を前に開いていくストレッチです。
1.椅子に浅めに座り、背筋を伸ばします。
2.胸の前で手を組み、息を吐きながら前に押し出します。肩甲骨をすべらせるイメージです。
3.視線は、みぞおち辺りへ向けましょう。首と背中もストレッチできます。
4.息を吸いながらもとに戻ります。
5.手を胸の前に組んだまま、右ひじを後ろに引いて上半身を回しましょう。
6.8の字を描くように上半身を回してください。ここまでの動作を10往復行います。
まとめ
肩甲骨まわりを柔らかく保つことは、肩こりや首こりに効果的です。今回紹介したストレッチを日常に取り入れることで、肩甲骨の動きがスムーズになり、全身のバランスも整いやすくなります。無理のない範囲で続けて、快適な毎日を目指しましょう。