【部位別】サッカーをすると足が痛い原因
サッカーが原因で起こる疾患やケガはいろいろあります。まずは、サッカーをすると足が痛む原因となる疾患やケガを、部位別に解説します。
股関節まわり:鼠径部痛症候群(グロインペイン症候群)
鼠径部痛症候群とは、鼠径部(足の付け根)や股関節、下腹部、坐骨部に痛みが生じる疾患です。特にサッカー選手が発症するケースが多く、走ったりボールを蹴ったり、起き上がったりするときに痛みを感じるのが特徴です。
原因
鼠径部痛症候群の主な原因は、体幹や股関節周辺の可動性や安定性、連動性の低下です。以下のようなことが原因で、体幹や股関節周辺の機能が低下してしまいます。
・筋肉を使いすぎ、または使わなさすぎて硬くなっている
・筋力が落ちている
・身体の使い方が不自然 など
機能低下により体幹や股関節のコントロールがさらに難しくなり、痛みを感じやすくなるという悪循環に陥り、症状が慢性化する場合もあります。
治療法
鼠径部痛症候群の治療では、主に患部の可動性や安定性を高めるためのリハビリが行われます。
・筋力向上訓練
・上半身・下半身の連動性向上訓練
・体幹と股関節の可動域訓練
・ランニングなどの動作訓練 など
治療期間
・軽症の場合:1~2か月程度
・重症の場合:数か月程度
膝下~脛:鵞足炎(がそくえん)
鵞足炎とは、膝の内側のお皿下部あたりにある「鵞足」に炎症が起きて痛みを感じる疾患です。鵞足とは、膝や足を動かす際に使われる縫工筋・薄筋・半腱様筋が、骨に付着している部分を指します。
原因
鵞足炎が起こる大きな要因は、足の使いすぎです。そのほか、次のようなことも鵞足炎の原因になります。
・間違ったフォーム
・ウォーミングアップ不足
・筋肉の柔軟性不足
・足に合っていない靴の使用
・地面が硬いところでの運動 など
治療法
鵞足炎の治療では、まず鵞足への負担を減らして炎症を抑えることを優先します。その後、鵞足の緊張状態を緩和するケアを行うのが基本です。
・安静
・炎症が起きている部位のアイシング
・ストレッチ
・マッサージ
・電気刺激療法
また、症状が長く続いている場合は、テーピングを行ったりインソールを活用したりする場合もあります。
治療期間
・運動を制限した場合:1~2週間程度
・運動制限をせず負荷をかけた場合:1~3か月程度
足首の外側:足関節捻挫
足関節捻挫とは、足首を内側方向にひねったことで足首外側に負荷がかかり、痛みや腫れ、内出血などの症状が現れた状態です。靭帯の損傷程度によって、1~3度に分類されます。
・1度:靭帯が伸び、軽度の腫れや痛みが出る
・2度:靭帯が部分的に断裂し、強い腫れや痛み、内出血が起こる
・3度:靭帯が完全に断裂し、激しい腫れや痛み、内出血が起こる
重症度が高いと、痛みによって歩くのが難しくなることもあります。
原因
足関節捻挫は、ジャンプ後の着地の失敗や転倒などによって足首をひねったことが原因で発生します。
一見同じように見える内くるぶしと外くるぶしですが、実は内くるぶしのほうが短めです。そのため、足首は内側方向にねじれやすくなっています。さらに足首の外側にある靭帯は、内側の靭帯よりも強度が低いため捻挫しやすいのです。
治療法・治療期間
重症度 | 治療方法 | 治療期間 |
1度 | ・RICE処置(安静・冷却・圧迫・拳上)
・サポーター固定(不要な場合あり) |
2~3週間程度 |
2度 | ・RICE処置
・サポーターまたは副木(シーネ)固定 ・松葉杖(歩行困難な場合) |
4~8週間程度 |
3度 | ・副木またはギプス固定
・リハビリテーション ・手術 |
3~6か月 |
かかと:踵骨骨端症(しょうこつこったんしょう:シーバー病、セーバー病)
踵骨骨端症(シーバー病、セーバー病)は、かかとに大きな負荷がかかって痛みや腫れなどの症状が現れる疾患です。成長期の、特にジャンプする動作が多いスポーツをしている子どもに多く見られます。
原因
成長期の子どもの踵骨は、成長軟骨と踵骨骨端核(しょうこつこったんかく)の2つに分かれており、大人の踵骨より強度が低めです。
そのため、アキレス腱や足底腱膜(そくていけんまく)によって強く引っ張られて負荷がかかると、炎症が起きたり血流が悪くなったりして、腫れや痛みが生じることがあります。特に以下に該当する場合は、踵骨骨端症を発症しやすいため注意が必要です。
・アキレス腱や足底筋膜の柔軟性が低い
・足を使いすぎている
・姿勢が悪い
・誤ったフォームでスポーツをしている など
治療法
踵骨骨端症の場合は、かかとの炎症を抑えることと、かかとへの負担を減らすことを中心とした治療が行われます。
・安静
・かかとのアイシング
・ストレッチ
・消炎鎮痛剤の使用
・低周波
・温熱療法
・サポーターでの固定 など
痛みが強い場合は、松葉杖を使ったりクッション性が高いインソールを活用したりして、かかとに負担がかかりすぎないようにすることもあります。
治療期間
・運動を制限した場合:1~2か月程度
くるぶし周辺:有痛性外脛骨(ゆうつうせいがいけいこつ)
有痛性外脛骨とは、足の内側にできた外脛骨という副骨(本来ないはずの余分な骨)によって起こる疾患です。内くるぶしの下あたりが痛む、腫れる、熱をもつなどの症状が出ます。スポーツをするときに痛みを感じたり、扁平足になったりする場合もあります。
外脛骨が存在するのは全体の15~20%といわれており、特に成長期の女性に多くみられるのが特徴です。X線やCTを使って診断を行い、外脛骨の状態によってⅠ~Ⅲの3タイプに分類されます。
原因
通常は、外脛骨があるところを押すと痛みを感じる程度です。しかし、靴などで圧迫されたり、スポーツで足を使いすぎたり、捻挫や打撲などのケガを負ったりすると、腫れや痛みなどの症状が出ることがあります。
治療法
有痛性外脛骨は、骨の成長が止まるくらいの時期に自然治癒するケースが多いため、運動制限や固定などの保存療法で対処するのが一般的です。痛みが強い場合や再発を繰り返す場合は、以下の治療が検討されます。
・安静
・消炎鎮痛剤の使用
・温熱療法
・電気刺激療法
・手術
また、足の負担軽減や筋力向上のために、インソールを使用したり、ストレッチやタオルギャザー運動を行ったりするよう指導されることもあります。
治療期間
・数か月~数年程度
膝周辺:オスグッド・シュラッター病
オスグッド・シュラッター病とは、脛骨粗面(けいこつそめん:ひざのお皿の下にある骨)が飛び出て、痛みや腫れなどの症状が現れる疾患です。
10~15歳くらいの子どもが発症するケースが多く、なかでもジャンプしたりダッシュしたりと、同じ動作の繰り返しが多いスポーツをしていると発症しやすくなります。
原因
オスグッド・シュラッター病の原因は、膝の曲げ伸ばしの際に働く大腿四頭筋です。ジャンプしたりダッシュしたりすると、大腿四頭筋の一部である膝蓋靱帯(しつがいじんたい)が、付着している脛骨粗面を牽引します。
すると脛骨粗面に大きな負担がかかって徐々に飛び出し、炎症が起きたり痛みを感じたりするのです。
治療法
オスグッド・シュラッター病の治療では、主に以下の方法で患部の痛みや膝への負担を軽減します。
・一時的な運動制限
・炎症が起きている部位のアイシング
・消炎鎮痛剤の使用
・サポーターやテーピングでの固定 など
足の甲~小指の付け根:ジョーンズ骨折
ジョーンズ骨折とは、足の小指側にある第5中足骨が疲労骨折した状態です。運動中・運動後に足の外側に痛みを感じることが多く、完全骨折すると歩くのが難しくなります。
原因
ジョーンズ骨折が起こる原因は、ジャンプやランニングなどの繰り返し動作によって足に大きな負荷がかかることです。また、屋内の段差を踏み外した拍子に第5中足骨を骨折するなど、スポーツ以外の出来事が原因になる場合もあります。
治療法
ジョーンズ骨折を起こした場合は、通常の骨折と同様の治療法が検討されます。
・ギプスで固定
・手術
ギプスなどの保存療法だと再び骨折するおそれがあるため、特に激しいスポーツをする方の場合は髄内固定術(ずいないこていじゅつ)をすすめられることがあります。
治療期間
・通常:1~3か月程度
・手術をした場合:3~4か月(術後、スポーツに復帰できるようになるまでに2~3か月ほどかかる)
サッカーをすると足が痛いときの対処法
サッカーで足の痛みを感じたときに、どうすれば良いのかと悩む方もいるでしょう。そこで、基本的な対処法を解説します。
足関節を動かさない
問題がある足関節を無理に動かすと、症状が悪化したり治りにくくなったりします。余計な負担をかけないためにも、しっかりと安静にして足関節を動かさないようにしましょう。
患部を冷やす
患部に炎症が起きている場合は、氷や冷却パックなどをタオルで包んでアイシングを行いましょう。一方、疲労の蓄積による痛みであれば、足湯や蒸しタオルで足を温め、血行促進させることが大切です。
足関節を固定する
足に痛みを感じたら、サポーターやテーピングなどで足関節を固定するのも有効です。足関節を固定して安定させると、痛みの軽減や回復の促進に役立つことがあります。
横になって足関節を心臓より高くする
足が腫れたり内出血が起きたりしているときは、足を心臓よりも高い位置に置きましょう。患部に送られる血液が減少し、腫れや内出血が緩和されます。
病院に行く
以下に該当する場合は、靭帯損傷や骨折などのケガを負っている可能性があります。
・強い痛みを感じている
・症状が長引いている
・患部が腫れている
・内出血を起こしている
このようなときはできるだけ患部を動かさないようにしながら、速やかに整形外科を受診することをおすすめします。レントゲンやMRIなどで原因を特定し、適切な治療が受けられます。
まとめ
サッカーをすると足が痛むのは、何らかの疾患やケガが原因の場合があります。放置すると症状が悪化するおそれがあるので、無理に足を動かさないようにする、患部を冷やすなどして対処しましょう。
痛みが強いときや患部が腫れているとき、内出血があるときなどは、骨折や靭帯損傷などを起こしている可能性があります。早めに整形外科を受診して原因を特定し、適切な治療を行いましょう。