肩甲骨周辺の肉離れとは?原因・対処法・再発予防までを解説

肉離れというと、太ももやふくらはぎなどの下半身に起こるイメージをもつ方が多いでしょう。実際に肉離れが起こりやすいのは足だといわれていますが、肩甲骨周辺で肉離れが起こることもあります。 今回は、肩甲骨周辺の筋肉に肉離れが起こる原因や対処法、再発予防法などについて解説します。


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肩甲骨周辺の肉離れとは

肉離れとは、筋肉に大きな負荷がかかって筋線維の一部が損傷・断裂することです。

運動時などに大きな負荷がかかりやすい足に起こることが多いですが、肩甲骨周辺の筋肉に起こる場合もあります。

肩甲骨周辺の肉離れは、左右の肩甲骨の間や、肩甲骨下部から腰上部までの広範囲で起こる可能性があるのが特徴です。

肩甲骨周辺の筋肉のどこかがダメージを受けて、筋線維の一部が損傷・断裂している状態で、「ぎっくり背中」と呼ばれることもあります。

肉離れが起きたときの代表的な症状は、突然生じる鋭い痛みです。

痛みの程度は重症度によって異なり、軽い痛みを感じるだけのこともあれば、身体を動かすのが困難なほどの強い痛みを感じる場合もあります。

痛み以外に腫れや熱感などの症状が出ることがあるほか、重症度が高い場合は内出血が見られることもあります。

肩こりや筋肉痛との違い

肩甲骨周辺に痛みが出る原因として、肩こりや筋肉痛もあります。しかし、肉離れと肩こり・筋肉痛は、原因や痛みの感じ方が大きく異なります。

【肩こり】
肩こりとは、疲労の蓄積や血行不良によって、肩周辺の筋肉が硬くなった状態のことです。慢性的に鈍い痛みを感じるほか、頭痛などの症状を併発する場合もあります。

【筋肉痛】
筋肉痛とは、運動などで筋肉を酷使した後、12~48時間ほどで現れる遅発性の痛みのことです。身体を動かすと痛みや違和感を覚えるのが特徴で、数日経てば徐々に治まっていきます。

【肉離れ】
肉離れは、筋肉に負荷がかかったことで筋線維が損傷・断裂した状態です。身体を動かした瞬間に「ブチッ」「ピキッ」という音や断裂感を伴うことがあります。

局所的な強い痛みを感じるほか、患部の腫れや皮下出血などの症状が出ることもあります。

肩甲骨周辺で肉離れが起きる原因

足で発生しやすいはずの肉離れが、なぜ肩甲骨周辺で起こるのでしょうか。ここでは、肩甲骨周辺の筋肉で肉離れが起こる主な原因を解説します。

長時間の悪姿勢

猫背でデスクワークをするなど、長時間姿勢が悪い状態が続くと肩甲骨周辺の肉離れが起こることがあります。

姿勢が悪いと肩甲骨周辺の筋肉に負担がかかって緊張状態になり、血行が悪くなるためです。血行不良になると筋肉が硬くなって柔軟性が低下するので、些細な動作でも筋肉がダメージを受けることがあります。

また、姿勢の悪さを改善しないと肉離れのリスクが高まるだけでなく、肩こりなどの慢性的な痛みにつながる場合もあります。

身体の冷え

身体の冷えも肩甲骨周辺の肉離れの原因になる場合があります。身体が冷えると筋肉が硬くなり、柔軟性が低下するためです。

特に冬場や冷房の効いた室内で過ごした後は、身体が冷えて筋肉が硬くなりやすいため、動作開始時の肉離れに注意しましょう。

筋肉の疲労

運動や仕事などで筋肉に繰り返し負荷がかかって疲れが溜まると、筋肉の収縮・伸張のコントロールが悪くなり、肉離れが起こることがあります。

また、不適切な食生活や睡眠不足なども筋肉の回復を妨げ、肉離れの原因となります。

運動不足

運動不足も肉離れの原因のひとつです。運動不足が続くと筋肉量や柔軟性が低下し、関節や筋肉の可動域が狭くなります。

すると急な動作や負荷に弱くなり、日常生活の些細な動作でも筋肉に負担がかかるため、肉離れが起こることがあるのです。くしゃみや背伸びなどでも肉離れが起こる場合があります。

肩甲骨周辺で肉離れが起きた際の対処法

肩甲骨周辺で肉離れが起きたときは、悪化を防ぐためにも速やかに対処することが大切です。ここでは、肩甲骨周辺で肉離れが起きたときの対処法を紹介します。

急性期|PRICE処置

肉離れ発生直後から約2日間を「急性期」といいます。この期間中は患部に炎症が起きている可能性が高く、無理をすると悪化するリスクがあるため、「PRICE処置」という応急処置を行いましょう。

【Protection(保護)】
安静にできる場所に移動する、テーピングで固定するなどして患部を保護し、症状の悪化を防ぎます。

【Rest(安静)】
72時間程度を目安に、患部を動かさないようにします。身体を寝かせるだけでなく、添木やタオルなどを当てて患部が動かないように固定することも、安静に含まれます。

【Ice(冷却)】
氷のうや氷を入れたビニール袋などで20~30分×数回を目安に患部を冷やし、炎症を抑えます。凍傷予防のため、タオル越しに冷却し、長時間の連続使用は避けましょう。

【Compression(圧迫)】
テーピングなどで患部を圧迫して、腫れや内出血を軽減します。強く圧迫すると血流障害が起こるおそれがあるので、押さえつけないようにしましょう。また、患部がしびれたり色が変わったりした場合は、すぐに緩めてください。

【Elevation(挙上)】
患部を心臓より高い位置に置いて血流を減らし、腫れや内出血を軽減します。自分で上げておくのは大変なので、タオルやクッション、椅子などを活用しましょう。

回復期のセルフケア

肉離れが起きた直後は安静にする必要がありますが、痛みが和らぎ回復期に入ってからも安静にしていると、回復が遅れてしまう可能性があります。長期間筋肉を動かさないままでいると、柔軟性が低下してしまうためです。

痛みが落ち着いてきたら無理のない範囲で肩甲骨周辺を動かし、少しずつストレッチを始めてみましょう。

血行を促進するために、患部を温めるのもおすすめです。患部を動かすと強い痛みを感じる場合は、整形外科の受診を検討してください。整体院に相談してみるのも良いでしょう。

再発予防のためにしておきたいこと

一度肉離れを起こすと、何度も再発することがあります。肉離れでできた傷が修復される前に患部を動かしてしまい、再び患部がダメージを受けることが主な原因です。

何度も肉離れが起こらないようにするには、どうすれば良いのでしょうか。ここでは、肩甲骨周辺の肉離れの再発を防止するために実践したいことを紹介します。

日常生活で正しい姿勢を意識する

猫背などの姿勢の悪さは肩甲骨周辺の肉離れにつながるため、普段から正しい姿勢で過ごすことが大切です。特に長期間のデスクワークは猫背になりやすいので、椅子に座るときは以下のポイントを意識しましょう。

・座面に深く腰かける
・背筋を伸ばす
・膝の角度が90度になるようにする

また、60分おきに休憩を取り、ストレッチをするなどして肩甲骨周辺を動かす習慣を身に付けましょう。

定期的なストレッチを取り入れる

肩甲骨周辺の筋肉の柔軟性が低下すると、肉離れを再発しやすくなります。定期的に肩甲骨周辺のストレッチを行い、柔軟性を保つようにしましょう。ストレッチを行うときには正しい姿勢で、ゆっくりと呼吸を止めずに動くのがポイントです。

なお、痛みを感じているときにストレッチをするのはNGです。無理にストレッチを行った結果、症状が悪化するおそれがあります。

筋トレを取り入れる

筋力不足は肩甲骨周辺の負担を増やし、再発リスクを高めます。また正しい姿勢を保つのも難しくなるため、筋トレを取り入れて筋力アップを目指しましょう。

まとめ

姿勢の悪さや身体の冷えなどが原因で肩甲骨周辺の筋肉が硬くなると、肉離れを起こすことがあります。普段から正しい姿勢を意識する、ストレッチを行うなどして肉離れを防止しましょう。

もし肉離れが起きてしまったら、速やかに応急処置を行うことが大切です。痛みが激しい場合やなかなか症状が落ち着かないときは、医療機関などに相談してみましょう。