顎関節症とは?
顎関節症とは、あごの関節部分の動きが制限されて痛みや違和感を引き起こす疾患です。日常のなかで生じる、よくある症状のひとつで、顎関節症に悩む方は男性よりも女性のほうが多い とされています。
顎関節は左右の耳の下にあり、あごの骨と頭蓋骨を結びつけています。食べ物を噛み砕くとき、飲み込んだり会話したりする際にも重要な役割を果たす関節です。
顎関節は使用頻度が高く、動きが悪くなると日常生活に支障がでるため、早めに対処する必要があります。
症状
顎関節症の症状は、大きく3つに分けられます。
・開口時痛
・開口障害
・関節雑音
下記の様子が見られる場合は、顎関節症を疑ってかかりましょう。
・痛みはないものの、口を大きく開けると耳のあたりで「ゴリッ」「カクッ」と音がする
・口を開けると片方、もしくは耳の下の両方が痛い
・あごを押すと痛い
・あごが痛み口が開かない、物を食べられない
・関節の動きがカクカクして、口を開けたり閉めたりするのが難しい
顎関節症の症状は、あごの関節に関連する骨・筋肉・関節円板・靭帯のトラブルにより引き起こされます。どの部分に問題があるかによって治療方法は異なりますが、症状の出方は個人差がありさまざまです。
セルフチェック
顎関節症は、家庭でセルフチェックできます。自覚症状がないケースもあるため、下記の項目に自分が当てはまるか確認してください。
<顎関節症のセルフチェック項目>
・最近になって噛み合わせが変わった
・口を開け閉めすると耳の下に違和感がある
・食べたりしゃべったりするとあごが疲れる
・口を大きく開けると異音がする
・あごに痛みを感じる、あごを圧迫すると痛い
・耳の下やこめかみ、頬に痛みがある
・硬い食べ物を噛みしめると痛みが強くなる
・口を大きく開けて鏡を見たときに、あごの上下がズレている
・口を大きく開けられない、縦に揃えた人差し指・中指・薬指の3本が入らない
・あごの関節が思うように動かない
・頭痛や肩こりがひどい
これらのチェック項目に多く当てはまるほど、顎関節症の可能性が高いと考えられます。
顎関節症の大半は積極的な治療を要しない軽度なもので、必要以上に神経質になる必要はありません。しかし、食べたりしゃべったりができなくなると日常生活に支障がでます。気になる症状がある場合は、早めにかかりつけの歯医者を受診して相談しましょう。
顎関節症の原因
顎関節症を引き起こす主な原因は、下記の通りです。
・TCH(Tooth Contacting Habit)
・歯並びが悪い
・日中の動作
・夜間の習慣
・精神的ストレス
・特定のスポーツ・職業
・外傷
顎関節症の原因はひとつではなく、いくつかが影響しあっているケースがほとんどです。それぞれを詳しくみていきましょう。
TCH(Tooth Contacting Habit)
TCH(Tooth Contacting Habit)とは、上の歯と下の歯を接触させるクセのことをいいます。直訳すると「歯列接触癖」ですが、噛み締めない限り、人間の口は歯の上下が少し開いているのが通常です。
本来開いている上下の歯を無意識に噛み締める習慣がTCHで、顎関節症を引き起こす原因の大半を占めているとされています。歯を長時間噛み締めていると、あごの関節に大きな負担がかかり、痛みや違和感が出やすいため、自分のクセを見直しましょう。
歯並びが悪い
歯並びの悪さも、顎関節症を引き起こす一因です。歯並びが悪いと上下の歯がうまく噛み合わなくなるため、あごの関節に負担がかかり痛みが出やすくなります。歯並びが悪いと左右どちらか一方で噛むクセがつき、関節に負担をかけやすいのも問題です。
歯科治療のかぶせ物や、入れ歯の噛み合わせが合っていない場合も顎関節症のリスクが高まるので、早めに歯科を受診してください。
日中の動作
日常的な動作や何気ないクセがあごに負担をかけ、痛みや違和感を引き起こしている可能性もあります。例えば、ガムをよく噛む、爪を噛む、片方の奥歯で物を噛むなどの習慣はあごに大きな負担をかけるため改善が必要です。
日常的な姿勢の悪さも、顎関節症を引き起こす原因にあげられます。猫背や頬杖をつく習慣は首やあごに負担をかけ、顎関節症につながりやすいので、普段の生活を見直しましょう。
夜間の習慣
夜中に寝ているうちの無意識の行動が、顎関節症を引き起こしているケースもあります。特に、歯ぎしりは注意が必要です。上下の歯を噛み締めてあごの関節や筋肉に大きな負担をかけ、強い痛みを引き起こす可能性があります。
そのほか、うつぶせ寝や横向き寝の習慣も姿勢を悪くし、首やあごに負担をかけて顎関節症につながりやすい傾向があります。
精神的ストレス
精神的なストレスも、顎関節症の原因のひとつです。人間は強いストレスを受けたり緊張したりすると、無意識のうちに歯を噛み締めることがあります。
ストレスに対抗しようとする食いしばりや歯ぎしりがあごの関節に大きな負担をかけ、顎関節症を発症しやすくなるため、注意してください。
特定のスポーツ・職業
特定のスポーツや趣味、職業が顎関節症の発症に影響を与えているケースもあります。特にリスクが高いのは、テニス・サッカー・ゴルフ・ラグビーなどです。競技の緊張から歯を噛み締める機会が多く、あごに負担をかけて痛みが出やすい傾向があります。
サックスやフルートなどの吹奏楽器を演奏する方、バイオリン奏者も同様です。顎関節症を発症しやすい方は、あごの痛みや違和感に敏感になりましょう。
外傷
怪我が原因で、顎関節症になることもあります。例えば、転倒して顔を打った後に痛みや違和感が生じたときは、あごの関節や筋肉が損傷している可能性があります。
受傷後に噛み合わせの変化に気が付いたら、早めに病院を受診しましょう。
顎関節症を改善するストレッチ&マッサージ
軽度な顎関節症なら、家庭でのセルフケアでも対処できます。あごの関節や筋肉をサポートする、下記のストレッチやマッサージを習慣にしましょう。
・口のストレッチ
・あご回しストレッチ
・開口ストレッチ
・咬筋マッサージ
・側頭筋マッサージ
それぞれの手順を説明します。
口のストレッチ
開け閉めしにくい口の動きをサポートするストレッチです。痛みがある場合は無理をせず、できる範囲で口を開けましょう。
1.あごを突き出すように、顔全体を上に向ける
2.口を大きく開けて5秒間キープする
3.いったん脱力して口を閉じ、再び大きく開けるのを3回繰り返す
あご回しストレッチ
あごの関節や筋肉のなめらかな動きをサポートするストレッチです。あごをゆっくり、大きく動かしましょう。
1.口を開けて「い」の形をつくる
2.顔の位置を変えずに、下あごだけをゆっくり右から左へ動かす
3.ゆっくりした動作で下あごを右下に向けて大きく開き、戻す
4.ゆっくりした動作で下あごを左下に向けて大きく開き、戻す
5.2~4を1セットとし、2回繰り返す
6.2~4のあごを回す方向を左から右へ変えて、逆方向に2セット繰り返す
開口ストレッチ
側頭筋を刺激しながら行う、口の動きをサポートするストレッチです。
1.こめかみにある側頭筋に人差し指を当てる
2.指と顔の位置を変えないまま、下あごをゆっくり右から左へ、左から右に1回動かす
3.あごをゆっくり前に突き出す
4.最後に大きく口を開く
5.2~4を10回繰り返す
咬筋マッサージ
食べ物を噛み締めるのに欠かせない、咬筋をほぐすマッサージです。
1.あごのエラから2~3cm斜め前、口を開け閉めしたときに筋肉が膨らむように動く部分に人差し指を置く
2.指で円を描くように動かして、8秒間マッサージする
側頭筋マッサージ
下あごを動かし、歯を食いしばるときにも使われる側頭筋をほぐすマッサージです。
1.左右のこめかみ、口を開け閉めした際に筋肉がぴくぴく動く部分に人差し指を置く
2.指で円を描くように動かして、8秒間マッサージする
まとめ
顎関節症は歯科的な問題のほかに、日頃の生活習慣やストレスなどが原因で引き起こされます。軽度なら家庭でのストレッチやマッサージでも対処できます。歯ぎしりや爪噛みなどのあごに負担をかける習慣がないかも見直して、早めに違和感をすっきりさせましょう。
なお、顎関節症が気になるときの寝方や関節が痛むときの対処法については、下記の記事で詳しく解説しています。あわせて参考にしてください。
【関連記事】