腱鞘炎とは
腱鞘炎とは、手首や指の腱鞘に炎症が起こる疾患です。腱鞘は、手首や指の腱を包むようについています。手を動かすときは腱鞘の中を腱が滑るように動くため、手首や指を酷使すると摩擦によって痛み・腫れが生じることがあります。
主に親指側の手首や、指の付け根に発症しやすい症状です。手首の腱鞘炎はドケルバン病、指の付け根に発症したときは、ばね指と呼ばれ ます。
炎症している状態の腱鞘の中は狭くなっているため、手首や指を動かすと痛み、腫れ、動かしにくさ、こわばりなどの症状が見られます。
腱鞘炎になったからといって、必ずしもすぐに大掛かりな治療が必要とは限りません。ただし、放置すると症状が悪化して日常生活に支障をきたす場合があります。
腱鞘炎になる原因
手首や指が腱鞘炎になる原因は、さまざまです。ここでは腱鞘炎のおもな原因を3つ解説します。
使いすぎによるもの
1つ目は、手首や指の使いすぎが原因です。近年は幅広い層が何らかのデバイスを日常的に使用しており、パソコンやスマートフォンを長時間使用することが珍しくありません。無意識に持ち方や指遣いで手を酷使しており、腱鞘炎につながるおそれがあります。
また、次のような反復作業や趣味も、腱鞘炎を招く可能性があります。
・楽器演奏
・手芸
・ラケットやクラブを使用するスポーツ
・育児や介護での抱っこ・持ち上げ動作の反復
・反復作業による慢性的な負担 など
手首や指に同じような負担がかかる反復動作は、注意が必要です。
ホルモンバランスの変化によるもの
女性の場合、ホルモンバランスの変化で腱鞘炎になることがあります。女性ホルモンの一種エストロゲンが減少して、腱鞘の柔軟性が低下するためです。
指を酷使した覚えがないにもかかわらず腱鞘炎の症状が出る場合は、妊娠や出産、更年期のホルモン変動が原因かもしれません。腱鞘炎は、閉経前後の女性にも多く見られます。
ホルモンバランスの変化が招く腱鞘炎は、ホルモン補充療法によって改善する場合があります。
作業時の姿勢によるもの
手首や指への負担が、作業時の姿勢に関わっていることも原因のひとつです。無理な姿勢で作業をしていると、身体に余計な力が入って血行不良を招き、腱と腱鞘の摩擦が増加することがあります。
例えば、身体のサイズに合わないデスクや椅子を使用、姿勢が悪い状態で長時間の作業などがあげられます。無理な姿勢での作業は腱鞘炎のみならず、身体のゆがみなど別のトラブルにもつながります。
整体は腱鞘炎に有効?
腱鞘炎への対処として整体を検討している方は、慎重に判断しましょう。腱鞘炎は強い炎症が生じている急性期のほか、症状が慢性化している場合もあります。急性期の強い炎症に対しては、整体よりも医療機関での治療を優先したほうが望ましいと言えます。
放置したり悪化させたりすると、慢性化するおそれがあるため、急性期のうちに対処することが大切です。すでに慢性化している腱鞘炎に対してなら、痛みの緩和や予防目的で整体を利用するのも良いでしょう。
整体は、腱鞘炎の予防のほかにも、さまざまなメリットがあります。整体に通うメリットについての詳細は、こちらの記事をご覧ください。
「整体に通う5つのメリットを解説!整骨院・接骨院・病院との違いは?」
腱鞘炎になってしまった際の対処法
痛みや腫れ、しびれなど腱鞘炎の症状が出たときのために、ここでは対処法を解説します。
まずは安静にする
腱鞘炎の対策で最も大切なことは、安静にすることです。症状が出ている手首や指を酷使しないように注意しましょう。どうしても作業しなければならない場合は、可能な限り反対の手を使い、負担をかけないことを心がけます。
サポーターやテーピングを活用して、患部の動きを制限する方法も効果的です。
炎症した腱鞘を腱が通るときの抵抗感で、指が動かしにくくなる症状のことを、ばね指と呼びます。ばね指の場合は、患部を固定すると関節が動かしにくくなるおそれがあるため、サポーターやテーピングで支える程度が適しています。
薬を使う
痛みや腫れなどの症状が酷いときは、薬に頼ることも大切です。外用鎮痛消炎薬なら、患部にピンポイントで塗ったり貼ったりできます。
腱鞘炎の症状に使用できる外用鎮痛消炎薬には、ローション薬、テープ剤、湿布剤などがあります。自分にとって使い勝手の良いものを選びましょう。内服薬の鎮痛剤も効果が期待できます。
注意点は、鎮痛剤や消炎薬の効果を過信しないことです。痛みが引いたからといって、すぐに患部を酷使すれば、悪化するおそれがあります。サポーターなどの装具も併用して、安静に過ごすことが軽快への近道です。
痛みがひどい場合は病院へ行く
安静にしても痛みがなかなか引かない場合や、症状が悪化した場合は、医療機関を受診しましょう。放置すると悪化が進み、手首や指を動かしにくくなるおそれがあります。
医療機関を受診すべきか判断するための目安は、次の通りです。
・痛みが2週間以上続く
・患部の曲げ伸ばしをしなくても痛い
・市販薬では改善が見られない
・関節部分が変形している
・熱がある
・患部が腫れている
痛みが長期間続く場合は、安静にする程度では改善できない段階かもしれません。痛みをブロックする注射や外用鎮痛消炎薬の処方など、医療機関で専門的な治療を受けましょう。
早めの受診は、仕事やプライベートの時間を守るためにも大切です。育児や仕事などで安静にするのが難しい方は、早めに受診して悪化する前に治療することをおすすめします。
腱鞘炎にならないための予防
腱鞘炎は、手首や指を使う機会が多い方なら、誰でも起こりうる症状です。予防するためには、普段の過ごし方を見直す必要があります。
ここでは、腱鞘炎を予防するコツを解説します。
こまめに休憩する
長時間の安静が困難でも、短い休憩なら取りやすいでしょう。パソコン作業をするときは、長時間のタイピングやマウス操作は避けて、こまめに手首や指を休ませます。
予防として、休憩を取りつつストレッチすることもおすすめです。適度なストレッチは、腱の柔軟性をアップさせる効果が期待できます。
腱鞘炎のときに実践できるストレッチについては、次の記事で手順を詳しく解説しています。
「腱鞘炎におすすめのストレッチ|注意点や再発を防ぐポイントも解説」
作業環境を整える
デスクや椅子のサイズ・高さを自分の身体に合うように調整することも大切です。合わないデスク・椅子で作業すると、自分でも気付かないうちに猫背になるおそれがあります。
パソコンでの作業が多い方は、手首や指への負担を軽減するアイテムも積極的に活用しましょう。手首の負担軽減にはアームレストを、指の酷使を避けるためにはトラックボールマウスへの変更を検討してはいかがでしょうか。
育児中の方は、育児や家事を家族と分担することも患部の安静につながります。家族の協力を得にくい場合は、一時保育を利用する選択肢もあります。
作業中の姿勢に気を付ける
作業中は、姿勢が悪くならないように注意しましょう。
例えば、デスクや椅子を使用して作業するときに、無意識のまま猫背になったり足を組んだりしている方は多いのではないでしょうか。猫背や足を組んだ状態は、自然な姿勢ではないため、身体に負担が生じます。
椅子に浅く腰かけて、もたれかかる姿勢での作業も避けたほうが無難です。不自然な動作で身体への負担が生じれば、腱鞘炎の原因となりかねません。
すでに身体にゆがみがある方、いつも無意識に猫背になってしまう方は、整体で身体のゆがみを改善するのもおすすめです。
まとめ
手首や指を酷使すると、腱を包んでいる腱鞘が炎症を起こし、痛みや腫れなどの症状につながります。女性の場合、ホルモンバランスの変化で腱鞘炎が起こることもあります。
腱鞘炎になったときの対処法は、まず酷使していた手首や指を休ませることです。症状によっては病院を受診して、きちんと治療することも検討しましょう。
慢性的な腱鞘炎への対処や、予防の一環として整体を取り入れるのもおすすめです。