腱鞘炎は湿布で対処できる?病院に受診するタイミングや適切な対処法も解説

腱鞘炎になったときに、湿布で様子を見たいと考える方は多いのではないでしょうか。腱鞘炎とは、関節を動かす腱や腱鞘に炎症が生じる疾患です。使い過ぎが原因で手指に炎症が生じると「ばね指」、手首は「ドケルバン病」と呼ばれます。 今回は、腱鞘炎に対する湿布の効果や注意点、痛みや腫れがあるときの対処法を紹介します。再発を防ぐポイントも解説しているので、ぜひ参考にしてください。


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腱鞘炎に湿布は有効?

家庭での対処法として、腱鞘炎に消炎鎮痛剤入りの湿布を使うのは有効です。炎症による痛みや腫れが和らぐ効果が期待できます。

湿布は大きく分けて、貼るタイプとクリーム・ゲル状の塗るタイプがあります。手は動かす頻度が高く、水に濡れる機会も多いため、部位や症状にあわせて使い分けてください。

貼るタイプの湿布は患部に密着し、効果が持続するのが特徴です。薄くて伸縮性の高い湿布なら、関節に貼っても邪魔になりにくいでしょう。一方、塗るタイプは目立たず浸透し、可動部位に使いやすいメリットがあります。

湿布を使用する際は、用法と用量を守るのが原則です。体質によっては肌が荒れる可能性もあるため、異常があればすぐに使用を中止し、医師に相談しましょう。

湿布を使用しても、腱鞘炎で痛みや腫れがある場合は安静が第一です。手を使う作業はなるべく控えて、早期回復を目指してください。患部をサポーターや装具で固定すると動きが制限され、痛みが楽になります。

湿布ではなく病院を受診すべきケースもある

腱鞘炎の痛みや腫れに有効でも、湿布では対応できない場合もあります。ここからは、病院を受診すべきケースをみていきましょう。

腱鞘炎で病院を受診するタイミング

軽度な腱鞘炎なら湿布で痛みや腫れがある程度落ち着きますが、日常生活に影響が出ている場合は迷わず整形外科を受診して治療を受けましょう。痛みが強くてもステロイド注射や手術(腱鞘切開)で改善が目指せます。

日常生活に支障がでているほどでなくても、痛みや腫れ、熱感、動かしにくさが14日以上続く場合は病院を受診したほうが安心です。特定の動作で痛みや違和感があるとき、湿布しても状況が改善されない場合も受診を検討しましょう。

腱鞘炎になりやすいのは、日常的に手を酷使する人です。下記の特徴に当てはまる方は、手指の痛みや違和感に注意しましょう。

・PC作業が中心のオフィスワーカー
・赤ちゃんを抱っこする機会が多い子育て中のママやパパ
・ピアノやギターなどの手を使う楽器を演奏する人、編み物が趣味の人
・長時間スマートフォンを操作している人

腱鞘炎の原因には女性ホルモンが関係しているとの指摘もあり、更年期の女性も腱鞘炎になりやすい傾向があります。

腱鞘炎と間違えやすい疾患

腱鞘炎だと思っていたら、別の病気が隠れていたケースもあります。湿布では改善が目指せない疾患もあるため、痛みの経過に注意しながら早めに受診してください。

腱鞘炎と間違えやすいのは、下記の疾患です。

・母指CM関節症
手の親指の付け根の関節に腫れや変形が生じる疾患です。親指に力を入れて小さな物をつまんだとき、ビンのフタを開けるときに痛みが出ます。

・ヘバーデン結節
手の指の第1関節にコブができ、変形する疾患です。40代以降の女性や日常的に手を酷使する方が発症しやすい傾向があります。

・手根管症候群
手首内側の手根管にできた炎症が神経を圧迫し、痛みやしびれが生じる疾患です。妊娠中や産後の女性、閉経期の女性、糖尿病の方は発症しやすいとされています。

・関節リウマチ
関節が変形して痛みが生じる自己免疫疾患です。手だけでなく、全身に症状がでます。

家庭でできる腱鞘炎のセルフチェック法

腱鞘炎は、家庭でのセルフチェックでも調べられます。手の痛みや腫れ、熱感、動かしにくさで悩みを抱えているなら、下記の要領でチェックしてください。

<手首:ドケルバン病のチェック法>

1.痛む手首をまっすぐに伸ばす
2.親指を内側に入れて手を軽く握る
3.ゆっくりと小指側に握りこぶしを傾ける

手首を傾けたときに痛みがある場合は、腱鞘炎の可能性があると判断できます。

<手の指:ばね指のチェック法>

1.手を軽く握る
2.痛む指をゆっくり伸ばす

指を伸ばしたときに動かしにくい、引っかかりがある、急にカクンと伸びるなどの違和感がある場合は、腱鞘炎の可能性が考えられます。

しかし、セルフチェック法はあくまでも目安です。手の痛みや違和感で不安な場合は、病院を受診して検査を受けましょう。

腱鞘炎で手指が痛むときの対処法

軽度な腱鞘炎なら、安静に過ごせばセルフケアで改善が目指せます。しかし、安静にし過ぎて動かさずにいると関節の動きが悪くなり、かえって生活に支障が出ます。湿布で痛みや腫れが落ち着いてきたら、ストレッチとマッサージで様子を見ながらケアをしましょう。

このとき、痛みのある周辺を無理に伸ばしたり揉んだりするのは危険です。刺激を受けて悪化する可能性があります。腱鞘炎のケアは、下記の要領で取り組んでください。

対処法1.ストレッチする

腱鞘炎の改善には、ストレッチが有効です。腱の柔軟性を高めて動きを良くするほか、腱の圧迫を軽減して痛みを和らげる効果が期待できます。

お風呂で身体が温まっている状態で、痛みが出ない範囲で下記のストレッチに取り組むと効果的です。

指を伸ばすストレッチ

1.胸の前で手を合わせる
2.痛みや違和感がある指を伸ばし、反対側の指で痛む指の第一関節をつかむ
3.ゆっくりと伸ばすように引っ張る

物をつかむストレッチ

1.手のひらで握り込める程度の、木かプラスチック製のブロックを用意する
2.痛むほうの手のひらにブロックを置く
3.指の付け根と第二関節が90度になるように曲げて、ブロックを指の腹と付け根ではさむ
4.ゆっくりと力を入れて、ブロックを握ったまま10~30秒キープする
5.ゆっくりと力を抜き、また握るのを30回、1日2セット繰り返す

対処法2.マッサージする

マッサージは痛む部位を直接揉みほぐすのではなく、少し離れた箇所を刺激するのが効果的です。下記の要領で、朝晩2回を目安にマッサージに取り組みましょう。

ただし、長時間続けると刺激が強く、痛みが悪化する可能性があります。マッサージは各部位10秒以内にとどめてください。

手首が痛むときのマッサージの仕方

1.痛みのある手でコップを持つような形を作る
2.親指の付け根にできる手首のしわから3cm程度下の部位に反対側の手の親指をあてる
3.親指の爪を立てて押し込みながら、小刻みにゆらすように10秒間刺激する

手指が痛むときのマッサージの仕方

1.痛む手を軽く広げる
2.手のひらの人差し指と親指の間にある部位を、反対側の親指と人差し指ではさむ
3.親指の爪を立てて押し込みながら、小刻みにゆらすように10秒間刺激する

腱鞘炎の再発・悪化を防ぐポイント

湿布で症状が落ち着いても、生活の仕方が変わらなければ腱鞘炎は繰り返します。ここからは、腱鞘炎の再発・悪化の防ぎ方をみていきましょう。

ポイント1.手の使い方を見直す

まず、手の使い方を見直す必要があります。手を酷使する生活を続けていると腱鞘炎は再発するため、PC作業時は手首の下にパームレストやマウスパッドを敷き、負担を減らしましょう。ワイヤレスのテンキーやマウスを使うのもおすすめです。

赤ちゃんを抱っこするときは手だけを使うのではなく、体幹に引き寄せて身体全体で支えるのが正しいやり方です。スマートフォンを片手で持ったり小指で支えたりすると手首に負担がかかるため、両手で持ち操作しましょう。

ポイント2.血行を良くする

腱鞘炎を防ぐには、血行を良くして手につながる部分全体のコンディションを整える必要があります。手だけでなく首や肩まわりをほぐして、血行を促しましょう。

下記の体操は凝り固まった筋肉をほぐし、手の動きを良くする効果が期待できます。

1.両足を肩幅程度に開き、背筋を伸ばしてまっすぐ立つ
2.両手を軽く握り、両肘を張って胸の前で水平に構える
3.ゆっくりと息を吸いながら、両肘を肩ごと後ろに引いて5秒キープする
4.次に口から息をゆっくり吐きながら、手のひらを広げて勢いよく前へ伸ばし、5秒キープする
5.一気に脱力して両腕をおろす
6.2~5の動作を3回繰り返す

まとめ

軽度な腱鞘炎の痛みや腫れには、消炎鎮痛剤入りの湿布を貼るのが有効です。ストレッチやマッサージにも取り組んで、早めの改善を目指しましょう。しかし、湿布はあくまでも応急的な対処法です。強い痛みや症状が長引く場合は、病院を受診して検査を受ける必要があります。腱鞘炎は繰り返しやすいため、手の使い方を見直して再発を防いでください。

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