手首の腱鞘炎の重症度をセルフチェック!対処法や受診の目安も解説

手首の腱鞘炎は、主にPCやスマートフォンの操作、育児や家事など、手首に負担がかかる動作の繰り返しによって起こります。「少し痛いけど我慢できるから」と放置すると炎症が悪化し、日常生活に大きな影響を及ぼす可能性もあるため、注意が必要です。今回は、手首の腱鞘炎の重症度をセルフチェックする方法や、症状が出たときの対処法、受診の目安を解説します。


この記事は約6分で読み終わります。

腱鞘炎とはどんな症状?

腱鞘炎の主な症状は、炎症が起きている部位の痛みや腫れ、発赤、熱感です。腱の動きが妨げられることで、こわばりやしびれ、動かしにくさなどの症状が現れることもあります。

また、親指側に痛みが生じる場合は、ドケルバン病の可能性もあります。ここでは、腱鞘炎が起こるメカニズムやドケルバン病との違いを解説します。

腱鞘炎が起こるメカニズム

腱鞘炎は、筋肉と骨をつなぐ腱と、腱を包む腱鞘(けんしょう)が繰り返しこすれ合うことで炎症が生じる病気です。

手首や指の酷使、同じ動作の繰り返しによって腱が太くなったり腱鞘が硬く厚くなったりすると、腱と腱鞘の間に摩擦が生じやすくなります。

この摩擦によって炎症が起こり、痛み・腫れ・こわばり・動かしにくさなどの症状を引き起こすのです。

腱鞘炎とドケルバン病の違い

腱鞘炎とは、体内の腱とそれを包む腱鞘の間に起こる炎症の総称です。腱鞘炎は、発症する部位によって異なる病名で呼ばれ、その中のひとつがドケルバン病(狭窄性腱鞘炎:きょうさくせいけんしょうえん)です。

ドケルバン病は、手首の親指側にある2本の腱(長母指外転筋腱と短母指伸筋腱)が通る腱鞘が狭くなり、腱と腱鞘がこすれ合うことで炎症が起きる病気です。手首の関節の親指側に痛み・腫れ・熱感が生じるのが特徴で、物をつかんだり手首をひねったりすると強く痛むことがあります。

腱鞘炎=ドケルバン病というわけではありませんが、手首の親指側に症状が集中している場合はドケルバン病の可能性を疑う必要があります。

手首の腱鞘炎の重症度チェック!受診の目安は?

ここでは、腱鞘炎の重症度をセルフチェックする方法を紹介します。以下のような症状があれば、早めに整形外科で診てもらいましょう。

痛みが強く日常生活に支障をきたしている

手首の痛みが強く、日常生活に支障をきたしている場合は、腱鞘炎が進行している可能性があります。例えば、痛みで眠れない・物を持ち上げると痛む・ペンを握ると激痛が走るといった症状です。

放置するとさらに症状が進行し、治療に時間がかかるため、早めに整形外科で診てもらいましょう。

手のしびれや麻痺がある

痛みや腫れに加え、手のしびれや麻痺もみられる場合は、腱鞘炎による炎症が周囲の神経を圧迫している可能性があります。

放置するとさらに悪化する可能性があるため、自己判断で様子を見るのではなく、早めに整形外科で診察を受けましょう。

腫れが悪化して手首を動かしにくい

手首の腫れがひどくなり、スムーズに動かせない状態になっている場合も、炎症が悪化している可能性があります。

腱鞘炎が重症化すると、塗り薬や湿布、内服薬といった保存療法だけでは十分な改善が見込めない場合もあるため、早めの治療が必要です。

腫れが悪化して手首を動かしにくい場合は、すみやかに整形外科で診てもらいましょう。

腱鞘炎の症状が出たときの対処法

腱鞘炎の症状が軽い場合は、まず手首や指をできるだけ休ませることが大切です。痛みを感じる動作を避け、できるだけ患部に負担をかけないように過ごしましょう。

また、薬剤師や登録販売者に相談し、市販の塗り薬や湿布などの外用消炎鎮痛薬でケアするのもひとつの方法です。

一方、上記で紹介した重症度チェックに当てはまる場合は、整形外科で診てもらいましょう。

整形外科での治療では、塗り薬や湿布、内服消炎鎮痛薬の使用に加え、ギプスなどで患部を固定して安静を保つ保存療法が基本です。痛みが強い場合は、炎症を抑えるステロイド注射を行うこともあります。

保存療法を続けても改善がみられない場合や、症状を繰り返す場合は、手術を検討することもあります。

手首の腱鞘炎の原因

ここでは、手首の腱鞘炎を引き起こす主な原因を3つ紹介します。対策法も合わせて解説しますので、症状の予防や悪化防止の参考にしてください。

手首の使いすぎ

腱鞘炎の主な原因は、手首の使いすぎです。手首を頻繁に動かすことで、腱と腱鞘の間に摩擦が生じ、炎症が起こりやすくなります。

特に以下のような習慣がある方は、腱鞘炎のリスクが高くなるため注意が必要です。

・PC作業や手書きの作業を長時間行う
・指先や手首を酷使する職業に就いている(美容師・大工・料理人など)
・楽器の演奏を日常的に行っている
・スマートフォンやゲーム機を長時間使用する
・乳幼児の抱っこやお世話で手首を頻繁に使う

腱鞘炎を予防するために、作業中はこまめに休憩をとり、同じ動作を長時間続けないことが大切です。だるさや痛みを感じたら作業を中断し、手首や指を安静に保ちましょう。

また、いつも同じ側の手や指ばかり使うのではなく、左右の手を交互に使うなど、負担を分散させる工夫も有効です。

PCを使う際は、手首への負担を軽減するために、手首を支えるクッションやリストサポーターの使用がおすすめです。スマートフォンは両手で持ち、両手で操作しましょう。
さらに、ゲームのコントローラーを操作する際は、手首をひねるような無理な動きは避けることが大切です。長時間プレイする場合は適度に休憩をはさみ、手首のストレッチを取り入れると良いでしょう。

加齢

加齢も腱鞘炎の原因のひとつです。年齢とともに筋力が低下し、腱や腱鞘の柔軟性も失われていきます。

特に、腱鞘が硬く厚くなることで腱との摩擦が生じやすくなり、炎症につながります。日頃から手首の使いすぎに気を付け、こまめなストレッチを取り入れることで腱鞘炎の予防につながります。

ここでは、腱鞘炎の予防に効果的な手首のストレッチを紹介します。

1.腕を前に伸ばし、手のひらを下に向ける
2.反対の手で指先を持ち、ゆっくりと自分のほうに引き寄せる
3.そのまま10秒キープし、ゆっくり元の位置に戻す

このストレッチでは、手のひら側とつながっている腕の筋肉を伸ばすことで、腱への負荷を減らす助けになる可能性があります。

ホルモンバランスの変化

女性に特有のホルモン変動が、腱鞘炎の発症に関係することがあります。女性ホルモン「エストロゲン」には、腱や腱鞘の柔軟性や弾力性を保ち、関節を覆う滑膜(かつまく)の腫れを抑える働きがあります。

一方で、「プロゲステロン」には腱鞘を収縮させる作用があります。2つのホルモンのバランスが崩れることで、腱や腱鞘に負担がかかりやすくなるのです。

そのため、妊娠・出産期や更年期といったホルモン変動の時期には、腱鞘炎を発症しやすくなるといわれています。特に産後は、ホルモンバランスの急激な変化に加えて、乳幼児の抱っこや授乳などで手首に強い負担がかかるため、腱鞘炎のリスクが高まります。

家事や育児を家庭内で分担したり、手首に負担のかかりにくい抱っこの姿勢を意識したりして、手首への負担を減らすことが大切です。

まとめ

手首の腱鞘炎は、手の使いすぎのほか、加齢やホルモンバランスの変化などが原因で起こります。PCやスマートフォン、ゲーム機を長時間操作する場合はこまめに休憩をとり、手首に過度な負担をかけないことが大切です。

また、痛みや腫れが大きく日常生活に支障をきたしている場合や、手のしびれ・麻痺などの症状がある場合は、炎症が悪化している可能性があります。自己判断で様子を見るのではなく、早めに整形外科を受診して適切な治療を受けましょう。