夜中に目が覚める「中途覚醒」とは?
中途覚醒とは、一度入眠したあと、起床するまでの間に何度も目が覚めてしまう睡眠障害です。健康な方でも中途覚醒は起こりますが、数分で寝つき、そのまま朝まで眠れる場合は心配ありません。
しかし、一度目が覚めるとその後なかなか寝つけず、寝てもまたすぐに起きてしまう場合は中途覚醒の可能性があります。夜中に何度も目が覚めると十分な睡眠がとれず、日中の疲れやすさや集中力の低下など、日常生活に支障をきたすことがあります。
夜中に目が覚める原因
夜中に目が覚める原因は人によって異なり、複数の要因が絡み合っていることもあります。ここでは、中途覚醒の主な原因を4つ解説します。
ストレス
通常、夜になると副交感神経が優位になり、身体がリラックスして眠気が生じます。しかし、職場や学校、家庭での人間関係や将来への不安などの精神的なストレスがかかると交感神経が活性化し、夜になっても脳の緊張状態が続きます。
その結果、眠ろうとしてもなかなか寝つけない、眠りが浅く夜中に何度も目が覚めるなどの症状を引き起こすのです。十分な睡眠がとれないとさらにストレスが溜まり、再び眠りが浅くなる……という悪循環に陥ることもあります。
加齢
加齢によって眠りが浅くなり、夜中に目が覚めやすくなる傾向があります。年齢を重ねると深い眠りの「ノンレム睡眠」が減り、浅い眠りの「レム睡眠」が増え、途中で覚醒する回数が多くなります。体内時計のリズムが変化することで睡眠の質が低下しやすいのも、中途覚醒の原因のひとつです。
また、年齢とともに必要な睡眠時間が短くなりますが、必要以上に布団のなかにいると全体的に睡眠が浅くなり、中途覚醒が起こりやすくなります。
不適切な睡眠環境
夜中に何度も目が覚める場合、不適切な睡眠環境によって眠りが浅くなっている可能性もあります。寝室の照明が明るすぎる、寝具が身体に合っていないなど睡眠環境が整っていないとリラックスできず、途中で目が覚めやすくなります。
また、リラックスを目的として入眠前に音楽を聴く方も多いですが、テレビやラジオなどをつけたまま寝ると睡眠中に覚醒しやすくなるため注意が必要です。
病気
病気が原因で夜中に何度も目が覚めてしまうケースもあります。代表的な例として、うつ病やむずむず脚症候群、睡眠時無呼吸症候群が挙げられます。
うつ病
うつ病とは、慢性的な気分の落ち込みや興味・喜びの喪失、無気力感などの症状が現れる精神疾患です。精神的・身体的ストレスなどによって脳の働きに不調が起きることで発症すると考えられています。うつ病は、気分の低下や焦燥感、不安などの精神的な症状のほか、食欲低下や頭痛、疲れやすさなどの身体的な症状も引き起こします。
また、うつ病の症状として睡眠障害も現れがちです。眠りの質が低下することで夜中に目が覚めやすくなり、再び寝ようとしてもなかなか眠れないこともあります。逆に、中途覚醒を含む睡眠障害が原因でうつ病を発症することもあります。うつ病が疑われる場合は、早めに精神科や心療内科を受診しましょう。
むずむず脚症候群
むずむず脚症候群とは、主に脚に不快な感覚が生じ、脚を動かさずにはいられなくなる病気です。原因ははっきりしていませんが、脳内の神経伝達物質「ドーパミン」の機能低下や鉄欠乏、糖尿病などが関連していると考えられています。
むずむず脚症候群の症状は夕方から夜間にかけて出現しやすく、中途覚醒の原因になります。脚がむずむずする、虫が這うような感覚があるなどの症状がみられる場合は、精神科や脳神経内科での適切な治療や対策が必要です。
睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群とは、肥満やあごの構造、扁桃腺肥大などが原因で睡眠中に気道が狭くなり、一時的に無呼吸状態になる病気です。寝ている間に呼吸が止まると脳が酸素不足を感知し、目が覚めてしまいます。
睡眠時無呼吸症候群になると睡眠の質が低下するだけでなく、日中の眠気や身体のだるさも生じ、将来の高血圧や心臓循環障害などへの影響も懸念されています。自分で睡眠時無呼吸症候群に気づくことは稀ですが、家族やパートナーに睡眠中の無呼吸を指摘された方は、早めに呼吸器内科や耳鼻咽喉科、睡眠外来などを受診しましょう。
朝までぐっすり眠る方法
うつ病やむずむず脚症候群、睡眠時無呼吸症候群といった病気が原因で夜中に目が覚める場合、医療機関で適切な治療を受けなければ、根本的な改善が見込めません。しかし、病気が原因ではない場合は、生活習慣を見直すことで中途覚醒の改善が期待できます。ここでは、朝までぐっすり眠るためのポイントを解説します。
生活習慣を見直す
睡眠の質を向上させるためには、生活習慣の改善が重要です。不規則な生活が続くと睡眠リズムが不安定になり、夜中に目が覚めやすくなってしまいます。休日は平日より多めに寝る方も多いと思いますが、できるだけ毎日の就寝時間と起床時間を一定に保つことが大切です。
また、朝起きたらカーテンや窓を開けて日光を浴びることで体内時計が整い、睡眠のリズムも安定しやすくなります。
運動不足の方は、日中に適度な運動を取り入れるのもおすすめです。やや速めの歩行・軽い筋力トレーニング・ヨガ・ピラティスなどの中強度の運動や、ジョギング・水泳・エアロビクスなどの高強度の運動は、睡眠の質向上につながります。
忙しくて運動の時間がとれない方は、短時間ずつでも運動を積み重ねてみましょう。
睡眠環境を整える
寝る前に強い光を浴びると脳が活性化し、中途覚醒につながります。寝る前は暖色系の照明に切り替え、スマートフォンやPCの画面を見ないようにしましょう。窓から外灯の光が差し込む場合は、遮光カーテンを活用するのがおすすめです。
また、寝具内部の温度は33℃前後が良いとされていますが、ベッドや布団の中の温度はパジャマや寝具で調節できるため、室温は13~29℃が許容範囲です。エアコンや除湿器、加湿器なども活用し、湿度は50%前後に調整しましょう。
就寝前のアルコール・カフェインの摂取を控える
就寝前にアルコールを摂取すると寝つきが良くなりますが、睡眠の質が低下しやすくなります。その結果、夜中に目が覚めたり、再び眠ろうとしてもなかなか寝つけなかったりすることがあります。また、カフェインには脳を刺激して覚醒を促す作用があるため、コーヒーや紅茶、エナジードリンクなどの摂りすぎに注意が必要です。
アルコールやカフェインが体内で分解されるまでの時間には個人差がありますが、少なくとも就寝4~5時間前には摂取を控えましょう。
ストレスを溜め込まない
ストレスが蓄積すると交感神経から副交感神経への切り替えがうまくいかなくなり、中途覚醒につながります。朝までぐっすり眠れないとさらにストレスが溜まってしまうため、できるだけリラックスできる時間を作り、ストレスを発散させることが大切です。
日中に軽いウォーキングやヨガなどで身体を動かしたり、就寝前のストレッチでリラックスしたりするのもおすすめです。忙しくてなかなかストレス発散の時間がとれない方は、ゆっくり呼吸する腹式呼吸を取り入れるだけでもリラックス効果が期待できます。息を吸うときにお腹を膨らませ、息を吐くときにお腹をもとに戻す呼吸法を繰り返しましょう。
まとめ
夜中に何度も目が覚めると熟睡できず、日中の疲労感やだるさ、集中力の低下を招いてしまいます。うつ病やむずむず脚症候群、睡眠時無呼吸症候群などの病気が原因ではない場合、生活習慣を見直すことで改善が期待できます。
平日・休日ともに規則正しい生活を意識するとともに、できる限りストレスを発散させ、睡眠の質を向上させましょう。