「肩こり」とは?
「肩こり」は現代病と言っても良いくらい多くの人が悩んでいます。
「肩こり」とは名前の通り、肩のこりを自覚症状として感じている状態ですが、多くの場合、肩周りの筋肉の硬さやハリ感を指して使われています。
実際、肩周りの筋肉に過剰な負担がかかって筋肉が硬くなって血管や神経が圧迫されることで、痛みや痺れなどの肩こりの自覚症状が生じています。
この記事では、肩周りの筋肉(筋膜)のアンバランスが原因による肩こりの対処法やセルフケアを紹介します。
「肩こり」の原因は何?
現代人の「肩こり」原因としては、スマホやパソコンの長時間使用や不良姿勢による肩周りの筋肉群の緊張や硬直が多いのですが、他にも様々な要因が関連している場合があります。
「肩こり」に対して適切な対処やセルフケアを実践するためには、自分の「肩こり」の原因を明確にすることが第一歩です。
- 心臓血管系の病気
- 心理的なストレス
- 骨や周辺組織の老化
- 肩周りの筋肉(筋膜)のアンバランス
心臓血管系の病気
私たちは24時間休まず呼吸をしていますが、呼吸を意識して行う時や息苦しい時には肩周りの筋肉にも負担がかかります。
「肩こり」に「息苦しさ」「息切れ」「胸の痛み」「むくみ」「高血圧」などの自覚症状がある場合は、心臓や肺の機能が低下していたり、「心筋梗塞」「狭心症」「肺気腫」「肺がん」などの疾患が疑われる場合もあります。
心理的なストレス
強いストレス状態に長時間置かれていると、交感神経が優位になります。
自律神経のバランスが乱れることで、身体の筋肉の緊張がリラックスしにくくなるため「肩こり」の要因になり得ます。
骨や周辺組織の老化
肩は人体の中でも最も可動域が大きい関節で、筋肉以外にも、骨、軟骨、腱、靭帯など様々な組織が肩周りの運動をサポートしていているため、骨や軟骨などの変性によっても「肩こり」が誘発される可能性があります。
例えば、背骨を構成する椎骨や椎間板が加齢変化などで変性する「変形性頚椎症」では、首や肩のこりや痛みが誘発されることが多いと言われていますし、「肩関節周囲炎(いわゆる四十肩や五十肩)」や「胸郭出口症候群」と「肩こり」も互いに影響を与えていると考えられます。
肩周りの筋肉(筋膜)のアンバランス
肩周りの筋肉は、体重の10%ほどの重さ(ボウリングのボウルのイメージ)の頭部と体重の6%ほどある腕を左右2本連結させているので、ただ静かに立っているだけでも、姿勢を支えるために多くの筋肉が活動しています。
また、肩関節がほぼ全方位の可動域(運動範囲)を持てるのは、骨結合による制限がないからですが、肩周りの筋肉は、骨結合による安定性の不足を補う役割もあるため、日常生活でも常に大きな負担がかかり続けています。
さらに、現代人は長時間のデスクワーク、不良姿勢でのスマホやパソコンの使用、運動不足などにより全身の筋肉の筋緊張バランスが乱れやすい傾向があるため、肩周りの筋肉の負担が慢性化して、肩こりも慢性化する傾向があります。
肩関節の構造と肩甲骨
「肩こり」を解消するための適切なセルフケアを実践するためには、肩関節の解剖学的特徴や構造を理解することが第一歩です。
「肩甲骨はがし」と呼ばれる整体やストレッチ専門店なども増えてきていますが、肩周りの構成要素の中でも、「肩甲骨」を意識できるようになるとセルフケアエクササイズの効果が上がりやすくなります。
「肩甲骨」とは?
「肩甲骨」は、背中の上部(肋骨背面)で、胸椎(胸の背骨)を挟んで左右に翼のようにある骨で、腕の骨(上腕骨)や鎖骨とも関節を作っていますが、骨的な強い結合が無いことが特徴です。
他の骨と強い骨結合がない「肩甲骨」の周りは複数の筋肉で覆われていて、不良姿勢によって筋肉や筋膜の緊張がアンバランスになると、肩甲骨の位置も変化し、その変化が目に見えるので、姿勢のバロメーターとしてもわかりやすい骨です。
例えば、現代人の不良姿勢である「猫背」の場合、両側の肩甲骨が外側に開いています。
「肩こり」解消セルフケアと筋膜リリース
「肩甲骨はがし」などと言われることもある肩周りのストレッチやエクササイズをして「肩甲骨」の動きを改善することで、「肩こり」などの肩周りの不調や不良姿勢を整えやすくなります。
呼吸を意識しながら、できるだけリラックスした(身体の他の部分に負担をかけない)状態で丁寧に行いましょう。
肩こりがひどく、「肩甲骨の動きが出にくい」「肩甲骨の動かし方がわからない」場合には、まず整体院などで筋膜リリースを行なってもらったり、身体の動かし方のアドバイスをしてもらうとより効果的なセルフエクササイズができるようになります。
肩回し体操
「肩甲骨」がしっかりと動いていることを確認しながら丁寧に行いましょう。
- 猫背にならないように姿勢を整える
- 脇を締めて肘を曲げ、両手の指先を肩の上に添える
- 前から後ろに肘で大きな円を描くように「肩甲骨」を動かす
- 後ろから前も同様に行う
タオルの上げ下ろしストレッチ
「猫背」や「巻き肩」で外に開いてしまった「肩甲骨」を中心に戻す意識で行うとより効果的です。
- 肩幅より少し広くなるように両手でタオルを持ち、腕を頭上に上げる
- 頭の後ろ側を通過させるようにタオルを背中の方向に下げる
- 20回程度を目安に繰り返す
このストレッチで意識して動かしたいのは「肩甲骨」です。
タオルを背中の方向に下げる時に、首や腰を反る動作が出て「首」や「腰」を痛めないようにしましょう。
肩すくめストレッチ
肩を上げたり下ろしたりするだけのシンプルなエクササイズですが、不良姿勢で首の方向へ移動しがちな「肩甲骨」を引き下げるイメージで行うと効果的です。
- 正しい姿勢に整えて一度肩の力を抜く
- 耳のやや後方に肩先をつけるイメージで両肩を持ち上げて5秒キープする
- 脱力するように肩をストンと落とす
- 5〜10回を目安に繰り返す
肩甲骨内外転ストレッチ
「肩甲骨」を背骨に近づけたり離したりする運動です。
肩こりで肩甲骨周りの筋肉が硬くなっていると、首や腰の反りで代償しょうとして首や腰を痛めてしまう場合が多いので、大きな動きにならなくて良いので、「肩甲骨」の動きに集中してストレッチを行いましょう。
- 背もたれのない椅子などに腰掛けて良い姿勢に整える
- 良い姿勢を維持したままお尻の後ろで両手を組む
- 後ろで組んだ両手で引っ張るように胸を開きながら左右の肩甲骨を背骨(身体の中心)に寄せる
- 組んだ両手を一度ほどいて胸の前で組む
- 両腕を前に突き出すようにして左右の肩甲骨を背骨(身体の中心)から離す
- ここまでを1セットとして3〜5回程度行う
ボールを使った筋膜リリース(マッサージ)
肩周り(特に背面)の筋肉を筋膜リリースやマッサージでほぐすには、テニスボールなどの利用がおすすめです。
ボールが硬すぎて痛い場合には、空気を抜くなどして調整しましょう。
- テニスボールを床に置き、その上にほぐしたい筋肉がくるように仰向けに寝る
- 身体を前後に動かしながら心地よさを感じる範囲で続ける
どこをほぐしたら効果的かわからない場合は、整体院などで身体の状態を確認してもらい、アドバイスをもらってからセルフケアを行うようにしましょう。
「肩こり」と姿勢
肩こり予防や改善のためにできるセルフケアとしていちばん有効なのは姿勢改善です。
「猫背」「巻き肩」「スマホ首」など肩こりの原因となりやすい不良姿勢で長時間過ごさないことや正しい姿勢を普段から意識するようにしましょう。
また、全身のバランスを整えて血流を改善する効果のあるウォーキング、ジョギング、水泳などの肩周りを含めた全身を使う有酸素運動を習慣化することも効果的です。